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取材 キム・ドンチョル

監修 リ・サンボン(脱北者)
整理 石丸次郎

6 揺らぐ国営石炭産業

北朝鮮の石炭生産の推移を見ておこう。
今や廃坑になってしまった游仙炭鉱の場合、リ・サンボン氏によると「六〇年代半ばに年間約三〇万トンの生産量があったが、八〇年代半ばには一七万トン程度に落ち込んだ。九二年には完全に稼働が止まった」という。

金正日政権も石炭産業の不振を何とかしたいと悩んでいることが、官製メディアを追っていると伝わってくる。石炭工業省の金亨植(キム・ヒョンシク)大臣のインタビューが、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」(二〇〇九年一月一四日付)に掲載された。以下はその抜粋。

「省全体で石炭生産の正常化のため、浸水した坑を復興させる事業を展開した。50キロ以上の配水管を自力でつくり、数十キロのケーブル、30数台の高圧電動機を供給して排水能力を高めたことは、炭鉱の復興におけるひとつの前進だった。
〔......〕

-当面の目標は
2.8直洞青年炭鉱の2段階坑建設を進め、新たな石炭生産能力を確保し、モデル炭鉱にしていきたい。また龍登、霊、済南炭鉱の第2段階ベルトコンベアー工事を完了して坑内運搬能力を向上させたい。」

北朝鮮当局も炭鉱の現状が「正常」でないことを自覚しているわけで、問題点を、キム記者やリ・サンボン氏が指摘したように、坑の浸水、機械設備の不備、電力供給にあることを認めている。

また施政方針を明らかにする年初の共同社説(注1)では、毎年のように石炭問題に触れているが、一一年一月のそれには、次のような言及があった(以下の引用は「朝鮮新報」二〇一一年一月一二日付「労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛の共同社説(要旨)」より)。

「石炭がどんどん生産されてこそ、肥料や繊維、電気、鋼材が生産される。石炭工業部門では埋蔵量が多く採掘条件の良い炭鉱に力を集中し、新しい炭田を開発して石炭の生産量を画期的に増やさなければならない。全国が石炭部門を自分のことのように支援し、炭鉱労働者の士気をさらに高めなければならない。」

石炭増産の訴えには悲壮感さえ漂う。しかし、現場の炭坑夫たちの士気は、キム記者の言葉にあったように極めて低調だ。正常な家庭生活を営み、日々の労働力を再生産できる待遇が与えられない限り、スローガンや動員では人は動かないということなのだ。一方で、北朝鮮内部にも石炭産業を動かす新しい仕組みが生まれつつある。拡大一途の市場経済の中で石炭ビジネスを展開しようという動きだ。

(つづく)
注1 「労働新聞」、「朝鮮人民軍」、「青年前衛」の三紙が共同で毎年元旦に掲載する長文の社説。前年の総括と新年の展望を並べる。

◆ 〈リムジンガン〉現地取材:衰退する石炭産業の現在(6)
◆ 〈リムジンガン〉現地取材:衰退する石炭産業の現在(5)

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