「ニュース&オブザーバー」の紙面。紙面に掲載されている写真は岩部氏の撮影

「ニュース&オブザーバー」の紙面。紙面に掲載されている写真は岩部氏の撮影

 

2011年6月、アメリカ東部の小さな町、ローリー(Raleigh)。ノースカロライナ州の州都とは言え、いつもは静かなダウンタウンのとあるバーに、たくさんの人が溢れ返っている。地元の新聞社「ニュース&オブザーバー」主催のパーティ。写真記者と読者の交流の場として設けられたものだ。
アイ・アジア編集部)

こうした催しはアメリカの新聞社では珍しいことではない。記者という仕事について話しをしに学校を訪問したり、その時々の時事を放談しにロータリークラブに顔を出したり、アメリカの新聞記者はコミュニティ・サービスにも忙しい。
バーの壁には写真記者たちの作品が飾られていた。読者は記者をつかまえては質問を投げかける。取材の裏話や機材の使い方など、読者からの質問は多岐にわたった。

新聞業界にとって暗い話題が続くなかで、スタッフの士気を引き上げようというねらいもあったのだろうか、実にタイムリーな企画だった。私も同紙の写真記者の一人として参加していたが、反響の大きさが素直にうれしかった。

「ニュース&オブザーバー」は1865年に創刊された。日本とは異なり、アメリカには所謂、全国紙というものはない。それぞれの街にそれぞれの新聞があり、人々の情報源となっている。「ニュース&オブザーバー」は150年近くにわたって、ローリー市民の目となり耳となってきた。
夜も更けて人々が帰途につきはじめたころ、私はホスト役を務めたジョン・ドレッシャー氏に歩み寄りパーティーが成功したことを祝福した。彼が「ニュース&オブザーバー」の編集責任者だ。

やがて雑談になり、最後はやはり仕事の話に行き着いた。職場とは違うリラックスした雰囲気だったこともあり、私は気になっていたことを彼に思い切って尋ねた。
「景気の悪い話しが続いているけど、ジョン、5年後に、私の仕事はあると思う?」
自分のクビは大丈夫なのか? 私はそう尋ねたのだ。
ドレッシャー氏は大きくかぶりを振って、「何を言うんだ?」という表情をみせた。「当たり前だろう」とか「心配するな」という返事を一瞬期待した私は、その後に続いた彼の言葉に打ちのめされた。
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