◇北部恵山 平壌から派遣の保衛司令部が担当
北朝鮮北部の中国との国境都市・恵山(ヘサン)市は今、緊張に包まれている。平壌から乗り込んできた「保衛司令部」が軍や公安機関を対象に大規模な「検閲(監査)」を行っているためだ。「保衛司令部」とは軍の思想統制を担当する機関。容赦無い調査を行うことから北朝鮮では「冥土の使い」とまで恐れられる存在だ。現地のアジアプレス取材協力者が伝えてきた情報を報告する。(ペク・チャンリョン)

◇密輸加担の発覚恐れ国境を完全封鎖

(参考写真)川向こうに見えるのが両江道恵山(ヘサン)市。密輸と脱北の拠点として有名な国境の都市だ。間を流れるのは鴨緑江。2010年6月、中国側から撮影(アジアプレス)。

(参考写真)川向こうに見えるのが両江道恵山(ヘサン)市。密輸と脱北の拠点として有名な国境の都市だ。間を流れるのは鴨緑江。2010年6月、中国側から撮影(アジアプレス)。

 

「11月5日頃、保衛司令部による検閲が始まった。今回の検閲はいつになく苛烈で、大きな動きがありそうだ。そのため、ここでは今、みな息をひそめて過ごしている。異常な状況だ」。
恵山市に住む取材協力者は今月10日、アジアプレスとの通話で現地の様子をこう伝えてきた。

検閲の内容について彼は「まず国境警備隊を厳しく取り調べている段階で、今後は、両江道の保安部(警察庁)、恵山市の保安(警察)署、分駐所(派出所)、保衛部(秘密警察)などの保安機関にも(調査が)拡大すると思われる。こうした機関では現在、検閲を受けるための(資料などの)準備をしている」
と述べた。

検閲は一般住民の生活に影響をもたらしている。「検閲の対象となっている軍・公安機関による住民への取締りが強まり、(中国との)国境が完全に封鎖された状態」と、この取材協力者は強調した。この背景には恵山市とは切っても切れない関係の「密輸」の存在がある。

同市は鴨緑江を挟んで中国吉林省の長白県と向かい合う。上流域で川幅も狭いため、住民による中国との密輸行為が主な経済活動の一つとして定着している。統制品である貴金属や薬草などを中国に売り、食糧品や生活必需品を輸入するなど、密輸の規模は大小、多岐にわたる。

中国との往来は自由でないため、未申告の密貿易はもちろん違法である。このため、密輸商人が国境を守る軍や公安機関に対し、「目こぼし」の代価として賄賂を送ることが数十年間常態化している。つまり、本来は取り締まるべき国家機関が、密輸の片棒を担いでいるのである。
また、中央から派遣されてきた組織による検閲は、軍や公安機関を経た後で、洞の行政組織など一般住民の生活領域にまで及ぶことが多いため、「恵山の住民たちは戦々恐々としている」というのが取材協力者の言だ。
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