◆軍事的な危険をともなう業務に従う義務はない

処分覚悟で会社の業務命令を拒否することは、むろん簡単なことではありませんが、軍事的な危険をともなう業務に従う義務は、もともと労使間の労働契約において存在しないことは明らかです。

以前、筆者が有事法制の反対運動の取材で話を聞いた航空労組連絡会の村中哲也さん(当時、同会副議長)は、こう指摘していました。

「たとえば、航空労働者の業務内容には航空法が適用されます。航空法第73条の2には、機長は『航行に支障がないことその他運航に必要な準備が整っていることを確認した後でなければ、航空機を出発させてはならない』と定めています」

「つまり安全運航する義務と権限です。民間機が軍事利用される場合は明らかに危険が予測されるので、航行に支障がないとは言えないわけです」

航空法が準拠する国際民間航空条約では、民間機を攻撃してはならない保護規定がありますが、軍事利用された場合は「国の航空機」と見なされて保護の対象からはずされます。

だから、自衛隊や米軍を支援する輸送をおこなえば、当然、攻撃の対象にされてしまうのです。さらに、世界中の空を飛ぶ日本の民間機や日本の空港までもテロ攻撃の標的にされるおそれがあります。

したがって、民間航空を危険にさらす軍事輸送などの業務は、航空法にもとづく航空労働者の業務内容とは相容れないものです。つまり本来の業務、正当な業務とはいえません。

当然、労使間の労働契約上もあってはならない業務となるわけで、業務とは呼べないことになります。要するに、軍事的な危険をともなう業務命令には法的根拠も正当性もないのです。

「企業は航空法にもとづいて運航規定をつくり、国交省の認可を得ています。つまり業務内容は航空法に違反してはいけません。そして航空法にもとづく業務内容を前提に、労働契約も就業規則も成り立っています」

「軍事的な危険が予測されるのに航行する業務は、航空法に違反することになります。そんな業務への命令は労働基準法から見ても、航空法から見ても、労働契約の範囲を超えています。だから、労働者にはそれに従う義務はないのです」

そう村中さんは論理的に説明したうえで、「お客さんの命までも危険にさらす民間航空の軍事利用に私たちは反対です」と強調しました。 続きを読む>>
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書籍 『検証・法治国家崩壊 ~砂川裁判と日米密約交渉』 (吉田敏浩)