(7)著しいプライバシー侵害
本件番組内で、申立人と共著者である笹井氏との間で交わされた電子メールの内容が、両者の同意もなく、完全に無断で公開されたが、これは完全なプライバ シー侵害であり、通信の秘密に対する侵害行為である。メール内容も、科学番組という目的からすると全く無関係であって、他の意図のもとで流されたとしか言 えないもので、およそ科学的検証番組とは相いれない、まさに「下品で低劣」な人権侵害行為と言える。

(8)取材過程での傷害行為
放映直前の同年7月23日夜、申立人は再現実験中の理研からの帰途において、本件番組の取材班から追跡を受け取り囲むなどの暴力的取材行為がなされたあげ く負傷した。本件番組は、このような違法な暴力取材を強行した上で、なお放送するに至っているものであって、社会的に許される限度をはるかに超えたなかで 放送されたものである。視聴者の受信料で維持されている公共放送として許容しうるものとは解しえない。当該行為についてはNHKから代理人への口頭での謝 罪はあったが、 本件番組内での謝罪も説明もなく、違法取材の加害者という感覚すら有していない。

(9)番組クレジットがなかった点について
本件番組では、番組の最後にでるべきクレジット(制作者名その他制作に関わった人物名)が一切出されなかった。毎回必ずクレジットが流されているところ、 本件番組だけが流されていない点は、異様さが際立っているが、関係者自身がその氏名を公表することに大きなためらいがあったことを示したものと考えざるを 得ない。

(10)直後の自殺
本件番組放送直後の8月5日、申立人の上司でネイチャー―論文の共著者である笹井芳樹氏が自殺した。本件番組と自殺との関係性は不明だが、当時は本件番組 が 引き金になったのではないかという報道もなされ、ネット等では、同様の意見が多く書きこまれたが、これ自体が、本件番組による申立人らへの人権侵害を推定 させる。

■放送局に求めたいこと
以上のとおり、本件番組の放送は、申立人らに対する著しい人権侵害行為があったと考えており、それに対する公式謝罪を求めるとともに、なぜこういった極め て偏向した番組作りが行われたのかについて、検証作業を行って公表し、今後同じような番組作りがなされない体制づくりなどの適正な対応を求めたい。

■これまでの経過
本件放送後、代理人弁護士から、「偏った内容だ」「集団リンチの先頭を切っている」と批判し大きく報道されたが、NHK側からは何らの応答はなかった。同 年10月20日に、NHK会長あての内容証明郵便で抗議文を送付したが、同年11月6日に、担当プロデューサーより、著しい人権侵害行為にはあたらないと 考えているとの趣旨の返事が届いた。
申立人は、本件番組以外にも、多数のメディアからいわゆるメディアスクラムを受け続け、その受けた精神的ダメージは、治療を要する状態となって、なお治癒 するに至っていない。本件申立は以前から検討していたが、申立を契機にして再度メディアスクラムが発生することを極端に恐れ今日に至った。しかし放送から 1年が近づきあり、こうした人権侵害を放置することは許容できず申立てを決意した。なお、本申立てを契機に、再び申立人へのメディアスクラムが発生するこ とのないことを願う。 (了)

※BPOのHP「『STAP細胞報道に対する申立て』審理入り決定」
http://www.bpo.gr.jp/?p=8254&meta_key=2015

もっと多くの記事は、アイ・アジアでご覧になれます。
http://www.npo-iasia.org