原発輸出に前のめりになっている日本政府。ベトナムをはじめ数か国に輸出をしようとしているが、その中でもNPT(核兵器不拡散条約)に加盟しておらず、 プルトニウムを取り出す再処理技術を持っているインドへの輸出には、慎重さが求められるべきだ。この問題について、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕 章さんに聞いた。(ラジオフォーラム

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◆核保有国インドに原発を売る意味
ラジオフォーラム(以下R): インドとの原子力協定とは、どのようなものなのでしょうか。

小出:世界は今つながっているというか、多数の国の間で貿易等が行われています。原子力関連の機材を輸入したり 輸出したりする、あるいは技術協力をするというような時には、「原子力協定」というのをはじめに結ぶことになっています。日本は現在14か国と原子力協定 を結んでいて、原子力の機材を輸出したり、あるいは技術的な協力をしたり、あるいは受けたりというようなことをやっているわけです。

インドとの原子力協定締結は、日本が原発を輸出することが何よりの目的となっています。しかし、そこには大変複雑な問題があります。インドは1974年に核兵器を造って、実際にそれを爆発させたことがあったからです。

インドは、カナダから原子炉を輸入して、そこで作られた原爆材料のプルトニウムを取り出して(再処理)、実際に原爆を造り上げたわけです。当時の米 国のカーター大統領がそれを見て、平和利用として原子炉などを渡してしまうと、原爆を造る技術力が世界中に行き渡ってしまう。これは大変な危機だと気付き ました。そして原子炉で生み出されたプルトニウムを取り出す技術が「再処理」と呼ばれる技術ですが、米国は自国ではもう商業用の再処理をやらないというこ とを決めたわけです。少なくともインドに関しては、もう原子力の協力は一切しないということで、原子力協定を破棄したのです。

R:それほど核拡散を恐れたわけですね。

小出:それほど大切なことだったわけです。年が経ちまして、父親の方ではなく息子のブッシュ大統領の時代、米国 の原子力産業はすでに崩壊に瀕していました。もう米国国内では原子力発電所を造ることができないということで、何とか海外に原子力発電所を輸出しなければ いけない。そうなると、インドというのは最大の顧客になるのだから、インドとの原子力協定を再度結ぼう。もう核兵器の拡散のことよりも金儲けの方が大切だ ということで、インドだけを例外的に優遇して、また原子力協定を結び、米国の原子力発電所を輸出するという道を敷いたのです。

日本は、米国の属国だと私はずっと言っていますけれども、米国の意に沿って日本もそのインドとの原子力協定を結んで、原子力発電所を輸出していくと いう方向に今、向かっているわけです。でも、それは、カナダの原子炉輸出でインドが原爆を作るに至った時代に再度戻ってしまうということになってしまいま す。本当にそれをやっていいのかどうかということに関しては、きちんと考えなければいけないことだと思います。