取締りを避けるために裏道を自転車で疾走する「テゴリ」の女性たち。農村から都市部に食糧を運搬している。2008年8月平壌市郊外の農村部で、撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

取締りを避けるために裏道を自転車で疾走する「テゴリ」の女性たち。農村から都市部に食糧を運搬している。2008年8月平壌市郊外の農村部で、撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

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5 市場経済拡大による社会変化

市場経済の急速な拡大によって北朝鮮社会の仕組みは大きく変化することになった。人々の意識も変わった。北朝鮮政権の国民統制が、世界で類例を探すのが困難なほど厳重であることは知られているが、この統制システムも揺らぎが出ている。

5-1 カロリー支配=「糧政」の終焉
食糧の個人の売買を禁じ国家が一手に独占管理する配給制度は、「糧政」と呼ばれていたことは述べた。これは要するに「食わせてやるから言うことをきけ」というシステムだ。

2016年1月時点で、国家による食糧配給が辛うじて維持されているのは、優良国営鉱山や軍需工場などの労働者、軍人、公安機関、党や行政の官僚、平壌市民など、政権が優待することで統制を維持したい対象だけである。この「優先配給対象」は北朝鮮国民の20-30%程度だと筆者は推測している。その他の人々は、市場活動で自力で現金を調達することを主として生計を立てている。※2

「糧政」が破綻することで現れたのは、職場離脱であった。仕事に出ても生活できるだけの配給も給料も出ないのだから、人々は、外で何らかの商行為をするか労働力を売って現金や食糧を得なければならない。

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