福岡県・大分県等における大雨に係る災害派遣 がれき撤去作業(2017年7月・陸上自衛隊HPより引用)


自然災害~確実で緊急性を帯びた「脅威」


「自衛隊に入ったのは災害救援をしたかったから」という女性隊員の言葉を何かの記事で読んだのは、十年以上も前のことだ。幼いころに奥尻島で津波を経験し、救援にやってきた自衛隊員の姿に安堵したと語っていた。

その後、「災害支援がしたくて自衛隊に入った」という若者の声を聞くことは珍しくなくなった。もちろん、自衛隊法で定められた自衛隊の「主な任務」は防衛出動であり、災害出動は「従たる任務」ということになるのだが、この20数年に全国で頻発した地震や火山噴火、水害といった自然災害を思えば、真面目な若者が災害救援の現場で働きたいと望むのは当然だろう。

その後、自衛隊の「従たる任務」には「海外派遣」が加えられた。イラクへの派遣や、国外初となるアフリカ・ジブチでの基地の設置など、海外任務が常態化した現実を追認し、さらに拡大していこうとする狙いがある。

海外派遣は「従たる任務」として災害出動と同格となった。ところが実際には、災害出動より海外派遣の方がはるかに重要な任務とされているようだ。それは部隊の再編のありようなどを見れば明らかだ。しかしそれは、多くの人が望む方向なのだろうか。

6月末からの西日本豪雨の被害拡大で、安倍首相は予定していた外遊をとりやめた。この外遊では、安倍首相は714日にパリで行なわれる革命記念日の軍事パレードを観閲するはずだった。パレードには自衛隊員7人が参加している。その前日には日米、日豪、日英に続く日仏ACSA(物品役務相互提供協定)に両国が調印している。ACSAは、両国の部隊が食料や弾薬を融通しあうという取り決めだ。5月にはベルギーの日本大使館内に「NATO日本政府代表部」が開設されていることを考え合わせれば、この外遊は安倍首相にとって、NATOと結んで世界大に軍事展開する自衛隊をアピールする絶好の機会だったのだろう。

同じころ、水害の被災地では一般車両が進入困難な場所で使われる消防庁の全地形対応車「レッドサラマンダー」が水害現地に初めて投入された。私はその存在自体を知らなかったが、驚いたのはそれが全国に1台しかないという事実だった。どう考えても少なすぎる。19800万円は高価には違いないが、防衛省がこれから導入しようとしている陸上イージス2基6000億円や1機100億円のオスプレイ17機よりははるかに安価だ。

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