羅津市の闇市場でコメを売る女性たち。「すべて中国です」とのことだった。1998年3月撮影石丸次郎(アジアプレス)

 

「ジャンマダンに行くと、無いものが無いんです。コメだって肉だって酒だって何でもある。衣服や薬もあるし、パンや麺類を売る食べ物屋だってある。ほとんどは中国から入ってきた品々です。でも値段がべらぼうに高くて手が出ないんです」

北朝鮮各地から時期を異にして出てきた越境者・難民たちが、異口同音に言う。餓死者が100万単位で出ている国で、市場に物が豊富にあるということを、どのように理解したらよいのか?直接目にするまでは、その光景を頭に思い浮かべるのは困難だった。

ジャンマダンという朝鮮語は、直訳すると「市の広場」ほどの意味である。このジャンマダンの増殖について難民証言を基に説明しておこう。

もともと、配給以外で民衆が食べ物を手に入れられる唯一の例外は、農民市場と呼ばれるマーケットだった。農民市場では農場員が自留地(個人で耕作が許された土地)でできた野菜や卵などに限り当局公認のもとに販売できる。それも、たとえば一のつく日、五のつく日だけ―一日市、五日市のように―月に数度開かれるだけの小規模なものだったという。

しかし、1993年ごろから深刻になった食糧難によって配給制度が破綻をきたし、人々はしかたなく農民市場で禁制品の食糧の売買を始める。以来、農民市場は瞬く間に増殖し、常設市と化していった。呼び名も、いつしか全国で農民市場からジャンマダンに変わっていく。
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