◆北朝鮮で政治犯として逮捕された兄は生死不明。息子2人も逮捕

北朝鮮での生活について証言するパク・ヨンスクさん(写真右)と、聞き手の石丸次郎氏(大阪市北区で撮影・合田創 )

 

1959年に始まった在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業で、北の祖国に渡った人たちが、どのような生を送ったのか――。日本と韓国に脱出した元在日帰国者の聞き取り調査に取り組む「北朝鮮帰国者の記憶を記録する会」の設立集会が7月上旬、大阪市中央区のエルおおさかで開かれた。集会には、脱北し韓国に住む在日帰国者の女性も招かれ、北朝鮮での生活を証言した。(栗原佳子・新聞うずみ火)
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北朝鮮帰国事業は1959年から84年まで25年間にわたって行われ、9万3000人(うち約7000人は日本国籍)が北朝鮮に渡った。当時の「在日」の6.5人のうち1人にあたる。しかし、その人たちの帰国後の暮らしについては詳細な記録はない。

 「記録する会」設立を呼びかけたのは、アジアプレス大阪事務所代表の石丸次郎さんや立命館大学教授の文京洙さん、のりこえネット共同代表の辛淑玉さん、映画監督のヤンヨンヒさんら。

日本と韓国に脱出した「帰国1世」は約300人いると推計されるが、多くは高齢で、できるだけ早く会って聞き取りをしないと記録を残す機会を逸しかねない。「記録する会」は約50人の聞き取りを進め、最初の帰国船が新潟港を出港して60年になる来年、記録集の刊行を目指すという。

中国と北朝鮮の国境に通い、脱北者数百人の取材を重ねてきた石丸さんは「日本社会は、帰国事業を、貧困や差別にあえいでいた在日朝鮮人が祖国に帰る慶事、いいこととしてこぞって『人道事業』として後押しした。9万3000人は、日本社会が背中を押して送り出した人たち。『在日朝鮮人史』の空白を埋める作業を『在日』と日本人の協働事業でやりたいと思う」と説明した。

この日、北朝鮮での生活について証言したのは広島県出身のパク・ヨンスクさん(79)。99年に脱北するまで約40年にわたって北朝鮮で暮らした。いまは韓国・ソウルで生活している。

パクさんは、先に帰国した両親や兄らを追って、60年代、帰国船に乗った。北朝鮮での厳しい暮らしは漏れ聞いてきていたが、「両親に会いたい一心だった」という。

「帰ったときには、ここで暮らしていけるのだろうかと思った。10年経てばよくなるかと思ったが、10年経っても20年経っても全然変わらなかった」とパクさん。苦しい暮らしをかろうじて支えたのは、日本の親戚からの送金だった。決して多くないお金を、きょうだいで分け合った。日本からの援助がない帰国者の生活はさらに過酷だったという。

政治犯として逮捕された兄は生死不明。息子2人も逮捕され、生死がわからないままだ。パクさんは「北朝鮮では言いたいことも言えなかった。人間には自由がないといけない」と話した。

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