逮捕送還後に再脱北してきた白さん一家。「もう北朝鮮では暮らせない」と。黒龍江省の寒村に潜伏中の2001年1月に撮影石丸次郎

 

◆北刑法は死刑も明文化

「北朝鮮に送還されると死刑になる」というのは、風聞にすぎない。が、まったく根拠のない話でもない。

中国への越境者がまだそれほど多くなかった95年以前は、中国脱出は、その理由の如何にかかわらず、政治犯として扱われていたようだ。80年代後半~90年代前半に中国に脱出した人の公開銃殺を見た、という難民証言を私は複数聞いている。「祖国への反逆の罪」であったという。

北朝鮮の刑法第47(2002年当時)には次のようにある。

「共和国公民が祖国及び人民に離反して外国又は敵側へ逃亡し、又はスパイ行為をし、又は敵を援助するなど祖国反逆行為をした場合には、7年以上の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合には、死刑及び全部の財産没収刑に処する」
※参考 2015年改訂刑法63(祖国反逆罪)

「公民が祖国を裏切り他国に逃亡したり、投降、変質したり、秘密を引き渡すような祖国反逆行為をした場合、5年以上の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合は無期労働教化刑または死刑及び財産没収刑に処する」

難民たちによると、北朝鮮脱出者は、かつては政治犯として少なくとも数年間収容所に入れられるのが普通だったようだ。中国に越境したその瞬間から、その行為が「政治性」を帯びる法的根拠が存在するのである。

だがその後、膨大な数の越境者・難民が中国から強制送還されるに及んで、全員を処刑したり、政治犯収容所に送り込んだりすることは難しくなった。中国越境の理由が飢えて食糧を求めてのことでもあり、また何より数が多くなりすぎたのだ。

越えてくる者、迎えいれる者 ― 脱北作家・韓国作家共同小説集

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