黒龍江省の寒村に潜伏中の60代後半の男性。北朝鮮では地方の中堅幹部だった。その後逮捕され北朝鮮に送還された。生死は不明だ。2001年1月に撮影石丸次郎

中国に越境する北朝鮮人は大きく分けて次のように分類できる。

①親族・知人の援助を受けるために越境し、短期間で北朝鮮に戻る人

②密輸や非合法な出稼ぎ等を目的にし、ある程度の金額が貯まると北朝鮮に戻る人

③飢えや生活苦、強圧的な統制、不自由な日常が嫌で北朝鮮での生活を放棄し、中国(あるいは第三国)で暮らすために越境した人

④北朝鮮で政治性を問題とされ、処罰を恐れて越境した人

ここで③と④が難民に該当する可能性があるわけだが、再び北朝鮮に戻るつもりで中国に出てきた人でも、外部世界を見聞してみて、北朝鮮に戻るのが嫌になって、ずるずるいついてしまい、ついには戻りそびれて「難民化」するケースも非常に多い。

北朝鮮の人が初めて中国に出て来て驚くのは、その物質的な豊かさと喧騒である。

◆車の多さ豊かな食事に驚く

多くの北朝鮮難民が一度は通過する延辺地区の延吉市や図們市では、その賑やかさにまず驚く。特に、車の多さと夜でも町が明るいことにびっくりする。まだモータリゼーションが始まっていない中国の地方都市には、タクシーやバス以外にそんなに自動車はない。

街灯や家庭の明かりにしても日本の感覚からいうと非常に暗い。それでも、街の中心部の市場界隈では、商店ごとに音楽を鳴らし、リヤカーとタクシー、バスが歩行者そこのけで、走り回る。市場はどこに行っても商品が溢れている。明るいネオンサインも増えてきた。難民たちの感想は概して「ポクチャッパダ(ややこしいな)!」。

そして豊かな食事。中国朝鮮族の家庭ではごく普通の、白米に味噌汁にキムチと数種類のおかずに「北朝鮮の幹部の家のようだ」と喜ぶ。また、毎日大量の食べ残しが出て、その白米混じりの残飯を、飼い犬までが満腹で食べ残していることにショックを受ける。

「犬が食い残す残飯のほうが、北朝鮮人民の食べているものよりいい」

どんな小さな村に行っても、商店に行けば、酒も菓子も溢れるほど陳列棚に並んでいる。

◆指導者非難しても罰せられない中国

次に北朝鮮難民が感動するのは、情報の多さと自由な暮らしについてである。全国どこに移動するのも自由、各種新聞、放送の多様な情報(周知のとおり、中国のメディアは統制されているのだが、それでもラジオを購入すると届け出が必要でチューニングをハンダで固定される北朝鮮とは比較にならない情報接触の自由がある)もある。

江沢民の悪口を言っても罰せられることはない。住民同士の相互監視も、「生活総話」と呼ばれる相互批判集会もないし、勤労動員もない。

中国の「改革開放政策の輝かしい成果」を目の当たりにして、越境してきた難民たちが北朝鮮に帰るのが嫌になるのも無理からぬことだ。そして、同じく社会主義を標傍する国で、どうしてこんなに差ができるのかと、自分たちの無残な貧窮生活を招いた原因について考えはじめる。
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