北朝鮮側でも、このように中国に「嫁入り先」の需要があることは知られており、せめて娘だけでも飢えから解放させて安全な潜伏先に落ち着くことを望む親が多い。進んでブローカーに頼んで中国に渡河させるケースも少なくない。ブローカーは親に金を支払うのが普通だ。

「親が娘を売った」という現象が起こるのだ。また娘としても、自分が中国に「売られていくこと」で家族の助けになればと考える場合が少なくない。北朝鮮から脱出することは、生きるためとはいえ続々と離散家族が生み出されていることを意味する。だが、そのなかでも、「難民花嫁」として脱出するのは、安全が当面は保障きれるために、もっともましな潜伏方法だと当事者たちは考えている。

この紹介業=ブローカーの行為は、まさに人身売買と紙一重で、悪質なブローカーが北朝鮮の娘を甘言で騙して強姦したあげくに、漢民族に「ノリゲ(慰みもの)」として売り飛ばすケースが跡を絶たない。しかし、たとえどんなに酷い目に遭わされても、北朝鮮の娘たちは訴えていく先がない。訴えることで北朝鮮脱出者であることが発覚し、強制送還につながるからだ。彼女たちにまつわる悲劇的な事件は中国でもたびたび表沙汰になり、朝中国境現地では「人身売買打倒」キャンペーンも展開されている。

かくして、吉林、黒龍江、遼寧省の朝鮮族農村には膨大な数の「難民花嫁」が迎えられるようになった。嫁不足に村存続の危機感を募らせるようなところでは、村長以下村全体で彼女らの秘密を守り、警察による「北朝鮮難民狩り」から「難民花嫁」を守っているケースまである。(続く)

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