天一号作戦で駆逐艦「浜風」に乗船し、戦艦「大和」撃沈を目の当たりにした阪口善次郎さん

 

194541日の米軍による沖縄本島上陸に合わせ、世界最大の戦艦「大和」を沖縄へ突入させる作戦が決定された。「天一号作戦」。生きては戻れない水上特攻隊である。「海軍にもう船はないのか」――。沖縄方面の作戦について奏上した海軍軍令部の及川古志郎総長に尋ねた、昭和天皇の一言が大和の運命を決めたと言われている。(矢野宏/新聞うずみ火)

◆「死んでたまるか」

7日朝、大和を旗艦とする艦隊10隻は沖縄を目指し、洋上を進む。阪口善次郎さん(96)=大阪府吹田市=が当時、通信兵として乗艦した駆逐艦「浜風」もこの作戦に組み入れられていた。

「豊後水道を航行中、甲板へ集合の命令が出ました。艦長から『この船は今夕、沖縄の米艦隊に突っ込み、魚雷をあるだけ発射した後は敵の艦に身もろとも体当たりすることになっている』と告げられ、私たちは初めて特攻を知らされたのです。艦長はこうも言った。『戦死を覚悟してもらいたい』と」

護衛する飛行機はない。阪口さんは「沖縄に向かうまでに、この艦は大和ともども米軍機に沈められる」と直感する。

阪口さんは2110月、大阪府西成郡西中島村(現・大阪市東淀川区)生まれ。5人兄弟の二男で、旧制中学への進学を諦め電鉄会社に就職。病弱な父に代わって一家を支えた。429月に呉海兵団入団。浜風に乗艦する半年前の446月、空母「飛鷹」の機関兵だった長兄がマリアナ沖海戦で戦死していた。

「こんな無駄死を強いるような馬鹿げた作戦で死んでたまるか」

阪口さんは浜風が撃沈されて海へ投げ出されても寒さに耐えられるよう、シャツやパッチを3枚ずつ、上着とズボンを2枚ずつ、配給されていたすべての衣服を着込んで勤務した。

昼ごろ、鹿児島県・坊の岬沖を航行中、阪口さんは米軍の緊急電を傍受する。通信室の丸窓を開けて空を見ると、200機を超える米軍機が大編隊を組んで向かってきていた。ほどなく大和への攻撃が始まる。

突然、「ズドーン」と大音響とともに大きく揺れ、停止した。艦内は停電となり、電波を切り替えようと部屋を出ようとしたとき、再び大きな爆音が轟いた。1発目の爆弾が艦尾に命中して航行不能、右舷に魚雷が命中して艦体が分断したのだ。

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