アスベストを含有するレベル3建材の廃棄物が入っているコンテナを上部から見下ろすと、建材を割らないように除去して重ねたとは思えないこんもりとした盛り上がりだった(井部正之撮影)

◆条例違反のずさん作業か?

今回の件は単純に住民に隠して着工したという程度の問題ではない。除去作業がアスベストを飛散させるずさんな作業だったり、違法だった可能性があるからだ。

レベル3建材であっても破砕すればアスベストが飛散し、将来的な危険があるため、大阪府条例はレベル3建材の除去の際には「原則として、手作業により原形のまま除去すること。やむを得ず機械等を使用して除去する場合は、石綿含有建築材料に散水してこれを除去すること」を求めている。

今回の工事に関連して府に提出された施工計画では、12月上旬から1月末まで約2カ月かけてレベル3建材を割らずに丁寧に撤去する計画となっていた。ところが、それを12月7日の説明会後のわずか2日間でほとんどを撤去したというのである。

元請けのダイナ建設は「手ばらしで適正に除去した」などと市財産活用課に説明しているというのだが、きわめて疑わしい。

ある優良アスベスト除去業者はこう推測する。

「約6600平方メートルを2日間でやるというのは専門業者からするとあまり聞かない話。本当に手ばらしでやるとしたら、熟練したアスベスト除去の職人でも1日60~70人くらい必要です。いまの人手不足の世の中そうそう解体で人は集まりませんから正直考えにくい。本当に手ばらしをしていたのなら、届け出前からこっそりやっていた可能性が高い。あるいは電動工具や重機などを使った不適正な作業ではないか」

届け出以前から除去していたとなれば、府条例違反である。手ばらしではなく、電動工具や重機を使った、アスベストを飛散させる不適正な工事だった場合もやはり府条例違反の可能性がある。

地元住民からは「説明会直後の週末は現場で何か作業をしていてうるさかった。それ以降は工事をしている感じはしない」との声が上がっている。

常識的に考えて、きちんとやったら2カ月もかかるような作業をわずか2日間で本当に適正なやり方で除去できるとは考えにくい。そもそも重機を現場に入れないのであれば、外壁を大規模にぶち抜くことは必要ない。外部からもうるさいと感じるほどだったということは重機を使った作業だった可能性が高い。

近隣の建物から「石綿保管場所」と書かれたコンテナを見下ろすと、上に掛けられたプルーシートで直接中は確認できなかったが、その盛り上がり具合から「手ばらし」で破損していないレベル3の成形板(90cm×180cm)が整然と重ねられているとようには見えなかった。

市財産活用課は不適正な工事だった可能性について否定せず、「(アスベスト建材を割らないよう)手で外すと聞いていましたし、非常に問題だと思います。いま事実確認中なんですけど、場合によっては法に触れる可能性もありますので悩んでいるところです」と対応に苦慮しているようすだ。府も事実関係を確認する方針という。

実際にどのような工事だったのかは府や市の調査を待たねばならないが、本当に2日間で適正な除去ができたとは考えにくい。府や市は現場でなにが起きていたのか、周辺にアスベストの飛散があり得る作業だったのか、廃棄物の状態も含め徹底した調査をすべきだろう。

さらにいえば、市はレベル3建材については破砕せず手ばらしすることを発注仕様で求めており、そうしなかったのであれば契約違反である。こうした面でも市は事実確認のうえで厳しく対応する必要がある。

◆軽視されるレベル3対策

そもそも今回の問題では、12月7日の説明会で住民や筆者がこのまま着工すればアスベストを飛散させる不適正な工事が起こるのではないかと指摘されていたにもかかわらず、市は当面アスベストがない箇所やレベル3建材の除去から開始すると宣言していた。12月10日午前、住民が再調査などを求める要望書を提出し、同行した筆者が調査ミスを具体的に指摘したのを受け、市が工事の一時停止を指示したのは同日午後5時ごろ。説明会における指摘をふまえて市が翌8日朝までに工事の一時停止を命じていれば、本来こんな問題は起こらなかったはずだ。

レベル3の成形板はしばしば「非飛散性」などと説明され、危険性があまりないと誤解されがちだ。たしかに破損などしなければ、建材中からアスベストが飛散する心配はない。しかし、割ったり破砕すればアスベストが飛散する。

今回のレベル3建材の除去作業が不適正なものだった場合、現場で作業に携わった労働者がアスベストを吸ってしまっただけでなく、周辺にも飛散したはずだ。市はそうした事実関係についてもきちんと調べたうえで住民に報告する義務がある。仮に飛散の可能性がある場合、住民の健康リスクはどの程度なのかも住民に対して示すべきだろう。