国連特別報告者のデビット・ケイ氏。
2019年の国連人権理事会のサイドイベントにて藤田早苗撮影

<危うい言論の自由>国連特別報告者が新たな勧告(1)ケイ氏の報告をまた拒絶した日本政府

デビッド・ケイ氏は2017年に再来日した際、報告書は日本の人々のものであり、勧告をどのように実現していくかは日本の人々にかかっている、と強調した。(※10)勧告を実現してくために、メディアも自分たちへの勧告を真摯に受け止めて取り組むべきである。また市民社会にも求められることは少なくない。本連載の最後は、ジュネーブでの2019年6月27日のインタビューからケイ氏の提案を紹介する。

◆「勧告は改善への提案」-実現するために何ができるか?

2019年6月27日、人権理事会の会期中、記者を対象にケイ氏の20分ほどのインタビューが設けられ、共同通信と産経新聞(電話参加)が質問し、それぞれ、その一部を記事にしている。(※11)筆者もインタビューに同席したので、勧告、ジャーナリストや市民社会のなすべきこと、政府の態度について、ケイ氏の解答を紹介する。

勧告は改善への提案
勧告は咎めるためのものではなく、日本のジャーナリストや市民団体が一歩下がってシステムについて考えるのを助けるためのものである。日本は表現の自由を保障する憲法を有するが、どの枠組みが改善できるのか。報告書は辛辣なものでなく、改善できるであろう状況を提案しているのだ。

政府が勧告を実施するために、ジャーナリストと市民社会がするべきこと
日本にいる人は表現の自由を享受しているので、議論に参加できる。この報告書を支持する多くのジャーナリストや学者から連絡をもらったが、彼らは勧告にある問題について真剣に取り組み関わりたい、と思っているようだ。

ジャーナリストにできることの一つは、ジャーナリストを守るための独自の委員会のようなもの、すべてのジャーナリスト同士の連帯を可能にする独自の組合のようなものをつくることだ。そしてそれは連帯のためだけではなく、法律や規則はどうあるべきか、記者クラブは民主社会で適切か、情報へのアクセスを拡大したか、などを考えるときに、ジャーナリストがお互いをサポートし見解を主張しあえるようなネットワークを作ることでもある。もしジャーナリストが市民社会と連帯するなどしてこういうものを作ったら、大変価値がある。

日本政府の態度:拒絶ではなく対話を
公式訪問の時、外務省はミーティングをよく準備し調整してくれて、私は大変うれしかったが、しかしその後は、 報告書への反応が拒絶だけで驚いている。政府から「たぶん我々が一緒にできることがあるだろう。これが我々の提案することであるが、妥当なことだと思われるだろうか?」というような対話はない。日本政府は私の勧告だけでなく、システムに対する私の理解も拒絶した。

しかし、私には日本政府と対話する用意がある。通常はジュネーブのミッションを通して行うが、世界の他の場所でもいい。例えばニューヨークとか、日本の総領事館があるロスアンゼルスとか、世界のいろんな場所で常に可能性はあるのに、政府からの働きかけはまだない。

日本政府に報告書の草稿を送ったが、私の見解を変えさせようとしたり、単に私の勧告をすべて拒絶したりするのではなく「あなたの言う日本のメディアの長期的な健全性(health)についてはわかった。同意できない点もあるかもしれないが、日本のメディアの健全性のための条件はなんだろうか。そのために我々は何ができると思うか」というような対話ができればよい。もし日本政府がそのように応えて招待してくれたらうれしい。

私はいつでもフォローアップ訪問を行いたいと強く望んでいるし、政府もそのことを知っていると思う。もし日本政府が「あなたの結論には同意できないが、この点については議論できるかもしれない」というようなことを言ってきたら公式訪問でなくてもよい。私が挙げた主要な問題のいくつかについて議論する、対話と交流を含む機会なら、どんな形の訪問でも生産的である。これが、国連人権メカニズムが機能する方法、つまり、対話を取り込むこと、である。(おわり)

※10 国連表現の自由特別報告者デビッド・ケイ氏を迎えて-対話と相互理解を求めて-2017年6月2日
https://www.youtube.com/watch?v=6fPq9tF5YSI
※11「報道の自由、政府と「対話用意」国連報告者、反発に」共同通信2019年6月28日
https://this.kiji.is/517077539966174305
「ケイ特別報告者が会見 日本の拒絶反応に「驚愕した」」産経新聞2019年6月27日
https://www.sankei.com/world/news/190627/wor1906270052-n1.html