日米合同委員会が定期的に開かれる外務省(2009年撮影・吉田敏浩)

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◆「安保法体系」と「密約体系」を運用するための裏マニュアル  

本連載で述べてきたように、国家の中枢である外務省、法務省、最高裁判所で、米軍優位の「安保法体系」と「密約体系」を運用するための裏マニュアルがつくられ、使われてきている。

外務省機密文書『日米地位協定の考え方・増補版』、法務省刑事局秘密資料『合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料』、最高裁部外秘資料『日米行政協定に伴う民事及び刑事特別法関係資料』などである。

それらの裏マニュアルの内容が示しているように、日米合同委員会を拠点にした外務官僚や法務官僚などが、米軍の特権を守るために地位協定の解釈を独占するかたちで、地位協定や関係法令の拡大解釈あるいは歪曲解釈をし、密約も交わしているのである。

憲法前文は、「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と定め、「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務」を普遍的な法則だと強調している。

ところが、日米合同委員会の日本側メンバーである高級官僚たちは、主権侵害をもたらし、国家間の対等関係を損なう米軍の特権を認める合意を、主権者である国民の目の届かない密室で結んでいる。

憲法前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民が享受する」とある。

「国民の代表者」とは、「正当に選挙された国会における代表者」すなわち国会議員のことである。

その主権者の代表である国会議員から成り、憲法第41条で「国権の最高機関」と定められた国会に対して、日米合同委員会の議事録も合意文書も公開せず、秘密にしているのは、「国政は国民の厳粛な信託によるもの――」という憲法の原理に反している。

そもそも日米合同委員会の日本側メンバーは、代表の外務省北米局長をはじめ全員が、憲法第99条により「憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定められている国家公務員なのである。
当然、憲法に従って職務をおこなわなければならない。

ところが、かれら高級官僚たちは、「安保法体系」と「密約体系」と一体化するかのように、憲法による「法の支配」に服さず、憲法の国民主権の原理から逸脱して、「法の支配」の枠外に出てしまっている。

立憲主義を空洞化させている。

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