アスベスト規制の強化をめぐり議論が続く環境省と厚生労働省の有識者会議。ところが民間からは「実質的な規制緩和」との声が上がる。法改正の焦点の1つ、作業時の測定義務と罰則はどうなるのか。(井部正之/アジアプレス)

9月2日の石綿飛散防止小委員会のようす。(左)環境省提案の「総繊維数濃度10本/L」基準を「甘い」と批判した山神真紀子委員と(右)「罰則まで徹底せよ」と要求した出野政雄委員(井部正之撮影)

◆委員からも批判相次ぐ

9月2日、環境省の中央環境審議会・石綿飛散防止小委員会(委員長:大塚直・早稲田大学大学院法務研究科教授)で、同省が「規制緩和」と指摘される測定方法を提案していた。

もともと同省は2014年6月の改正大防法施行と併せて改訂した「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル2014.6」で、施工区画・敷地境界における測定について、「石綿繊維数濃度1本/L」とするよう求めてきた。これは法的基準ではなく「目安」ではあるが、複数の自治体で指導基準として採用されており、半ば規制として機能してきた側面がある。そうした状況下で「評価目安」として「総繊維数濃度10本/L(空気1リットルあたり1本)」に“緩める”というのが国の方針案だ。

民間からの批判や懸念の声は10月9日ヤフーニュースやアジアプレス・ネットワークに掲載の拙稿(環境省がアスベスト飛散認める規制“緩和”提案 「改正前に逆行」と反発も)をご参照いただきたいが、こうした規制“緩和”方針に対して、小委員会でも批判が相次いだ。

「総繊維(数濃度)10本(本/L)は基準として甘い」

こう批判したのは名古屋市環境科学調査センター環境科学室主任研究員として、現場で測定の実務を担ってきた山神真紀子委員である。

「(空気1リットルあたり)10本以上(の漏えい)は近年ほとんどない。(基準が)10本なら7~8本(の漏えい)ならオーケーとなる。(外部への漏えいが)7~8本あるというのは養生しているところから漏れているのは間違いない。10本というのは甘いんじゃないかと思う。総繊維(数濃度)で指導するというのであれば、総繊維は(実際にはそれ以外の繊維も含むが)アスベストと見なして、1リットルあたり1本とするのが当然ではないか」

長野県水大気環境課長の渡辺ゆかり委員も「(測定結果をふまえて)施工者が点検などおこなうのであれば、基準が(空気1リットルあたり)10本は高すぎるのではないか。異常を感知する検査で考えるとちょっと高い」と同意見だ。

本当に10本以上の漏えいが「ほとんどない」かどうかは別にして、現場で指導・監督を担う自治体の委員2人が「10本では緩い」と判断したことは大きい。

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