アジアプレスが入手した「龍岳山」というブランドのダブレット端末。SDカードでデータを移動できる。

 

◆携帯に保存の写真、メールまで検閲

携帯端末の検査は、事件捜査だけにとどまらない。北朝鮮には、街頭で服装や髪形などの風紀を専門に取り締まる「糾察隊」「非社グルパ」と呼ばれるチームがある。彼らまで、街頭で携帯電話の検査を強要するようになった。取材協力者は 10月初旬にあった笑い話のような事件を伝えてきた。

恵山(ヘサン)市内の映画館の前で靴工場に勤務する20代の女性が、服装が社会主義風俗に違反しているという理由で「糾察隊」に呼び止められた。「糾察隊」は、携帯電話に外国ドラマなどの不法映像物を保存していないか確認するとして、携帯電話の中をチェックしようとした。

女性が抵抗して暗証番号を教えなかったため、「糾察隊」は彼女を保安署まで連行して、中を見せろと強要した。だが、端末の中にあったのは不法映像物ではなく、その女性の下着姿の写真だった。それを見られるのが恥ずかしくて、女性は検査に強く抵抗したのだという。

北朝鮮では、韓国との交流局面が増えた昨年来、韓国情報の流入を強く警戒し取り締まってきた。当局は、街頭で携帯電話のメールの文面までチェックするようになった。協力者は次のように言う。

「『非社グルバ』が、『通報文』(メールのこと)を調べるのはしょっちゅうだ。何を見るかというと、韓国風の言い回しや略語を使っていないかだ。例えばty。これはthank youの略なのだそうだ。このような単語があると、韓国映画を見ただろうと追及される。それで、学生や若者たちは取り締まりを避けるために、『通報文』を送ったら、すぐに削除している」

中国で製造された北朝鮮仕様の携帯端末は、国内でもっとも安いもので200米ドル、500米ドル以上もする高級機もある。これを国民に独占的に販売することで、金正恩政権は莫大な利益を得ている。一方で、当局が管理不可能な情報流通が拡大することとなった。(カン・ジウォン)