東京の日本外国特派員協会で記者会見に臨んだデビッド・ケイ氏。2016年4月19日、撮影筆者

◆官邸からの申し入れ手紙とその背景

12月28日付の上村秀紀総理大臣官邸報道室長から内閣記者会への手紙は、12月26日の官房長官記者会見での東京新聞の特定記者による質問について事実誤認などがあった、として次のように述べている。

「当該記者については、東京新聞側に対し、これまで累次にわたり、事実に基づかない質問は厳に慎んでいただくようにお願いして」きた。それにもかかわらず「再び事実に反する質問が行われたことは極めて遺憾」である。官房長官会見はインターネットなどでも配信されており、そこでのやり取りは国内外で直ちに閲覧可能なので、「正確でない質問に起因するやり取り」が行われると事実誤認を拡散させ、会見の意義を損なわれることを懸念する。そのため「正確な事実を踏まえた質問」をするように。

同種の申し入れ手紙は東京新聞にも送られている。

周知のようにこの「東京新聞の当該記者」とは望月衣塑子記者のことだ。そして「事実誤認に基づく質問」というのは、望月記者が12月26日の会見で、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設工事について質問し「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」「埋め立てが適法に進んでいるか確認ができておりません」と述べたことについてである。

赤土について首相官邸側は「汚濁防止措置を講じており事実誤認」と反論したが、異論も出ている。ネットのニュースによれば2月6日国民民主党の山井和則国対委員長代行は、上村官邸報道室長らに対するヒヤリングを行った直後に、記者団に対して埋め立て現場の写真を示しながら「これはどうみても赤土。これを事実誤認だと言われると、記者も質問しづらくなるのではないか」と言ったという。

この官邸の内閣記者会に対する申し入れについて、2月5日に新聞労連が、2月19日には研究者と弁護士、メディア関係者など専門家のグループが、それぞれ「自由で批判的な質問をする記者の会見からの排除」であり、「記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭める」として抗議声明を発表している。

専門家グループは、赤土の問題は政府と野党の認識が鋭く対立しているのに、政府の一方的認識を前提として、質問者から寄せられた赤土が広がっているという事実認識を「事実誤認」と断定して説明を免れ、質問を抑圧することは取材の自由、報道の自由への侵害である、と346人の賛同者の名前で抗議した。(1)

また新聞労連は次のように抗議した。記者会見において様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは記者としての責務であり、こうした営みを通じて、国民の「知る権利」は保障されている。政府との間に圧倒的な情報量の差があるなか、国民を代表する記者が事実関係を一つも間違えることなく質問することは不可能。官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭めるもので、決して容認することはできない。(2)