ワイロを要求する 警官を突き飛ばし「何様のつもりだ」と罵倒する女性。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

◆免許登録を規定の50倍で販売

もう一つの稼ぎの柱は交通課だ。個人の交通違反で得られる賄賂は額がしれているため、バスやトラック、オートバイなどの車両の免許証発行や移動許可に目をつけ、露骨にカネを要求している。

「恵山市の交通課では、実質的に個人が所有していながら、名義を貿易会社などに登録している車両の『取り締まり対象リスト』を作成している。知人は10トントラックを建築設計会社の所有として登録して、恵山-咸興(ハムン)間を月に6度往復して荷物を運んでいるが、交通課から毎月1000元(約1万5200円)もむしり取られている」と、協力者は伝える。

個人所有が認められているオートバイの免許も稼ぎの材料だ。本来、免許登録料は、10万ウォン朝鮮ウォン(約1300円)程なのだが、交通課では4000元(約6万2000円)で免許証を「販売」しているという。これは規定の50倍の金額だ。

保安員や保衛員(秘密警察)などの統制機関による賄賂要求やタカリ行為は以前から常態化していて住民の不満が強く、当局でも問題視していたが、財政難が深まった最近では、より露骨になっている。「住民の反発は強烈だ」と、協力者は言う。

◆警察の「賄賂利権」巡って幹部同士で暗闘

賄賂収入の利権争いから権力機関内部で対立も発生している。咸鏡北道の茂山(ムサン)郡の協力者が9月末に報告してきたところによると、現場で交通取り締まりに当たる交通課の「交通指揮隊」の保安員が、茂山郡の保安部長によって全面交替させられる事件があったという。

街頭で直接賄賂を取れる「交通指揮隊」は、保安署の中で最も稼ぎのよい部署だ。彼らを全面交替させたのは、カネに目がくらんで取り締まりが怠慢だというのが理由だったが、それは表向きで、実際は保安署幹部の利権争いが原因だと、協力者は説明する。

事件のきっかけは9月9日の党創建記念日だった。郡の保安部長が「交通指揮隊」に祝日の特別配給の資金を準備するよう指示したのだが、党や人民委員会(地方政府)に人脈を持つ交通保安員たちが、他の組織にカネを納める「宿題」があるせいでカネが作れないと、指示に背いたことが発端だったという。

怒った郡保安部長は、交通保安員たちの勤務態度や不正を理由に全面交替を命じたのだ。その意図はもちろん、他の幹部の系列にカネを流出させないためである。協力者は次のように説明する。

「郡保安部長の指示で、『交通指揮隊』は、除隊軍人や軍の士官として服務した後に保安員になったばかりの者などに、すべての交替させることになった。自分たちにカネをちゃんと上納する人間にとっ替えたということだ。郡保安部長は、各地の保安署の幹部人事にも着手し、自分の息のかかる者を登用した。ある一般保安員の妻は『保安部長自身が金持ちになりたくて無茶をしている』と不満をぶちまけた」