中国公安当局が北朝鮮との国境沿いに立てた密輸、麻薬売買禁止の看板。2017年7月に撮影石丸次郎

中国への密輸が簡単でなくなると、密造・密売組織は国内で販売するようになり、覚醒剤は流行のように拡がった。富裕層を中心に、タバコのように「一服しなさい」と気軽に勧めるほど「寛容」で罪悪意識が薄い。また「疲労に効く」と薬効を信じている人も多い。まるで、戦前戦後の日本の「ヒロポン」の流行を彷彿とさせる。

金正恩政権の名誉のために言うと、北朝鮮当局は、この5年ほど、中国への密輸はもちろん国内流通も厳しく取り締まっている。

だが、覚醒剤の危険性が軽視され、罪悪感が希薄な社会風潮と、捕まっても賄賂で解決できるという官憲の腐敗構造のため、覚醒剤の蔓延には歯止めがかからないままだ。

北朝鮮国内の協力者たちは、最近の刹那的な世相も、庶民をして覚醒剤使用に走らせていると指摘する。経済制裁の長期化によって暮らしが悪化し、金正恩政権が改革開放に向かおうとせず、むしろ人民統制を強めているため、将来に展望が持てずストレスだらけ。覚醒剤を吸ってひと時の快楽に酔っていたいという投げやりな空気があり、そこに密売人たち付け込んでいるのだという。