広島県選管から開示された選挙運動収支報告書には、選挙運動にかかわる宿泊費(休泊費)が法定上限を超えているとの指摘メモ書きがある。

◆弁当代や宿泊費も超過支払い

広島県選管が指摘した箇所が修正されているのは、ポスター貼付料だけではなかった。

例えば、選挙最中の7月12日の食事代についても、10月に情報公開請求した収支報告書に「弁当代は1食1000円が上限です 要確認」というメモ書きがあり、焼き肉屋での食事代として1050円の支出が記載されている。それが3月に請求した収支報告書では、1000円に改められている。領収書をみると、50円は自己負担と手書きで記入されていた。

休泊費(宿泊費)の欄にも「宿泊費の上限は一夜1万2000円ですが超過していませんか 要確認」というメモ書きがあり、7月4日、7月20日の金額が囲まれている。それが、3月に入手した収支報告書では、二つとも減額されており、7月20日の日付に関しては7月18日に変更されている。

休泊費の当該日の領収書をみると、「再発行」という判が押してある。これについて、領収書を発行したホテルに、どのような理由で領収書を再発行したのか質問したが、期限までに回答はなかった。

◆政治資金収支報告書も差し替え可能か

政治家には、選挙に関する収支だけでなく、政治活動に関する収支も報告する義務がある。それが政治資金収支報告書なのだが 、恒常的に差し替えが行われている可能性があるため、広島県選管に質問をしたところ、「政治資金収支報告書においては,11月末に行う要旨等の公表までに申出があった場合は,修正を受付けています。要旨等公表後は,訂正としての受付となります」
と回答があった。

つまり、「差し替えを含む修正」を認めているのだ。政治資金収支報告書の差し替えも行われている可能性がある。

この点について上脇教授は以下のように指摘した。
「政治資金収支報告書もいったん選管に提出されたら、差し替えを認めるべきではない。広島県選管がこれまで実際にどのようなケースで差し替えを認めたのか不明ですが、差し替えを認めてしまうと、法令に違反した収入や支出を有権者は発見できなくなります。広島県選管は、今後差し替えを認めるべきではありません。広島県選管だけではなく、他の都道府県選管や総務省でも同様の差し替えが認められていたのではないかとの疑念が生じます。全国の都道府県選管や総務省は国民に対し説明すべきです」

こうした運用を総務省、各選挙管理委員会がしているのであれば大問題だ。民主主義を機能させるためには、政治を有権者がチェックできる体制が欠かせない。その一端を担う選挙管理委員会が、差し替えを含む修正を認めていたのでは民主主義が機能しないのではないだろうか。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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