概要どころか「項目」のみ記載した厚労省のパブコメ

◆改正内容の記載なく法違反か

さらにひどいのは「調査者講習登録規程」告示の改正案である。

今回新たに戸建て住宅やアパートのアスベスト調査だけを実施できる簡易資格「一戸建て等石綿含有建材調査者」を定めるもので、数年で30~40万人を育成する方針というのだから影響の大きな改正である。

ところが、新たに定めるという「一戸建て等石綿含有建材調査者」になるための必要な講習について、「以下を規定する」として、講習の講師の要件、講習の実施方法、講習の講義内容と7~8文字ずつ箇条書きしてあるだけ。「講習の講師の要件」として実際にどのような資格や経験が必要なのかなど具体的な記載は1つもないのだ。

これでは厚労省が上記の3件について何を定めようとしているのか知りようがない。

同省化学物質対策課は「概要とさせていただいているので」と釈明する。調査者講習規定を同省と共管する環境省大気環境課も「厚労省のほうで実施するということで事前に確認してまして、概要に基づいてパブコメということで了承している」との見解だ。

しかし、改正の「概要」どころか「項目」しかないのが現実だ。

その結果、実際にアスベストの調査や除去を担う事業者から「意見募集の内容がわからない」「何を聞きたいのか書かれていないのにどうしろというのか」とのとまどいや怒りの声が上がっているのだ。

これら2つのパブコメは行政手続法に基づくもの。同法第39条第2項にはパブコメで示す改正案などは「具体的かつ明確な内容のもの」であることを規定している。

行政手続法を所管する総務省行政管理局行政手続室は「法律に具体的かつ明確なものであってとあるので網羅的に明示されている必要があり、一部の例示では足りない」と過去に出した通知を示しながら説明する。ただし、指導権限などはないためあくまで「一般論」としている。

同省の2006年3月通知によれば、上記の「具体的かつ明確な内容」とは担当官庁において「十分な検討を経て練られたもの」で最終的な規定事項が「具体的かつ明確に記載されている必要がある」としている。さらに「これは、何をどのように定めることとしているかが網羅的に明示されている必要があり、定めようとする事項の一部の例示では足りない」とも指摘され、続けて今回のような政省令の場合として、「定めようとする内容が例えば部分的にしか分からないような概括的なものであってはならない」と念押ししている。

行政法が専門の名城大学法学部・北見宏介准教授は「講習の内容や要件については、項目しか示されてなかった。これでは案を示していることにもならない。概要だから良いという話のようですが、概要すら示されていない。具体的な内容がなければ、およそ意見を示すことはできない。国民から意見を聞く気があるのかといわれても仕方ない。制度趣旨に沿わない運用ということになる」と指摘する。

5月25日時点で国が意見募集中の46件のパブリックコメントすべてを調べたが、今回の事例のように項目だけで中身がないずさん事例はなかった。現在実施中のパブコメのなかで、厚労省による2件のパブコメのレベルの低さは際立っているといってよい。手抜きにもほどがあろう。

総務省通知でパブコメにおいて規定予定の事項が「網羅的に明示」される必要があり、「一部の例示では足りない」と記載されていることからも、厚労省による今回の2件のパブコメは行政手続法違反の可能性がある。

事業者からも「内容がわからない」と指摘が出ている以上、記載内容を修正したうえでパブコメを再実施すべきではないか。

「そういった方針になっておりません」と厚労省化学物質対策課にその気はない。

だが、現実に改正内容の案すら示されず、事業者が理解できない状況が起きている以上、手続きが適正とは言いがたい。しかも総務省通知の指摘通りの法違反の疑いのあるずさんな制度運用なのだ。このままパブコメ結果をまとめればよいなどということはあり得ない。

パブコメの再実施はしばしば行われていること。今回の石綿則や関連規定の改正は影響も大きいことからも丁寧な制度運用が求められよう。あるいは改正内容をはなから国民にきちんと示すつもりなどなかったということなのか。