(参考写真)商売する若い女性(左)に、市場管理員が難癖をつけて激しく罵っている。2013年3月平安南道の平城市にて撮影アジアプレス)

◆経済悪化で民衆イライラ

金正恩政権が国境封鎖など強力な新型コロナウイルス防疫措置を取った影響で経済悪化が深刻になり、住民の間に動揺が広がっている。市場では、商売不振の上、当局が価格に介入するなど干渉を強め商人たちの反発を招いており、取り締まりの保安員との間で口論やいさかいが頻発していることが分かった。(カン・ジウォン/石丸次郎)

コロナウイルスの流入を遮断するため、北朝鮮は1月末に中国との国境を封鎖、貿易が中断した。直後から輸入品を中心に物価が高騰したため、当局は2月からコメや中国製品の販売価格の上限を設定し、保安員(警官)などが市場を巡回して監視と取り締まりに乗り出している。

上限価格を超えている場合は没収までする厳しさだ。また、自国通貨ウォンの下落を恐れた当局は、中国元など外貨の市場での使用も禁止した。

◆市場殺伐、警察を集団で非難 「火が付いたら爆発」

商品の仕入れを自己資金でやっている商人たちが反発したのは言うまでもない。国境封鎖が長引くにつれ、取り締まり機関との間でいさかいや言い争いが頻繁に起きるようになったと、各地の取材協力者が伝えてきていた。

北部の両江道恵山(ヘサン)市に住む協力者Aさんは、5月3日に市場で目撃した光景を次のように伝えてきた。

「保安員らの執拗な取り締まりに、商売人の一人が『あれもするな、これもするなというが、どうやって生きていけというのか』と、泣き喚いて抗議した。その場にいた商人たちが同調し、保安員を大声でなじるなど騒動が大きくなった。市場の空気は確かにずっと険悪だったが、この日は、火がついたら爆発しそうな雰囲気だつた。他の都市も同様に殺伐としているそうだ」
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