コロナウイルス拡散への危機感を露わにした金正恩氏。写真は2020年4月。労働新聞より引用

7月に入り、北朝鮮当局は新型コロナウイルスに対する防疫強化を繰り返し強調している。「感染者ゼロ」を自賛しながら、国際的な再流行に危機感を持って警戒を徹底せよという内容だ。だが、アジアプレスが入手した内部文書には、国内感染を示唆する内容があり、平壌南方の軍部隊で感染者が出ているとの情報も入って来た。(石丸次郎/カン・ジウォン)

◆「コロナ防疫」を執拗に強調し始めた金政権

少し過剰ではないか…?

7月2日に開かれた労働党中央委員会の政治局拡大会議で、金正恩氏は新型コロナウイルスへの警戒を強調した。それ以降、北朝鮮当局は繰り返し防疫の徹底をくどいほど繰り返している。この動きを見て、過剰だと感じたのは筆者だけではないだろう。

政治局拡大会議で金正恩氏は、「悪性ウイルスの境内侵入を徹底的に防御し、安定した防疫形勢を維持している」と自賛しつつも、防疫当局内で「放心と傍観、慢性化した傾向と非常防疫規律違反傾向について厳しく批判した」。

さらに「防疫措置の緩和は、想像することも、挽回することもできない致命的な危機を招くことになる」と述べるなど、コロナウイルス拡散に対し危機感を露わにした。

しかし、この金正恩氏の警告は、直前の国内の状況と対照すると、やや唐突に感じられた。6月に入って、厳格だったコロナウイルス対策が緩和されていたからだ。

北朝鮮は、1月末に中国国境を封鎖した後、国内でも他地域への人と物資の移動を禁止し、学校の新学期開始を延期、風邪の症状が出ているだけで隔離するなど、強力な統制を実施していたが、6月初旬から学校を再開、移動制限も若干の緩和に踏み切っていた。

◆政治局会議後、緩和から一転して統制再強化

だが、前述した政治局拡大会議での金正恩氏による報告の後、北朝鮮国営メディアは矢継ぎ早に、「コロナ警戒」を大々的に報じるようになる。

例えば、7月7日付けの内閣機関紙「民主朝鮮」は、「空中と海上から流入する物体を発見したら焼却処理する規律を厳格に立てた」と記し、7月10日付けの労働党機関紙「労働新聞」は、一面に掲げた論説で「どんな経済建設の成果より大流行している伝染病の侵襲を防ぐことをさらに重要とすること、この事業に最善を尽くさなければならないというのが我が党の要求だ」と書いた。

「労働新聞」は7月17日にも「世界的な大流行伝染病を徹底的に防ごう 緊張し、また緊張して非常防疫事業を強化」という記事を掲載。咸興(ハムフン)織物工場の例をあげて、徹底して隙のない防疫対策を講じることの必要性を具体的に指摘した。

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