東京都板橋区大山の再開発で、吹き付け材の分析をしていない階があった建物の1つ

◆第三者による再調査や検査を

NGO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」事務局長の永倉冬史氏は、「吹き付けアスベストが使用されている可能性の高いエレベーター室が『施錠未調査』となっている建物があったほか、電気室の調査結果が記載されていなかったり、駐車場の屋根裏が調べられていないなど複数の未調査箇所が見受けられた。このままだと商店街にアスベストが飛散しかねない」と指摘する。

永倉氏らが調べたところ、
(1)建物の1つで吹き付けアスベストが使用されている可能性の高いエレベーター室が「施錠未調査」で機械室の調査・分析結果も記載なし
(2)吹き付けアスベストの使用された建物の1つで電気室の調査結果が未記載
(3)建物の1つで「全体ロックウール吹き付け」かつ1階で吹き付け材にアスベストを検出。2、4階で不検出だが、3階だけ分析結果が存在しない
(4)建物の1つで吹き付けアスベストが使用される可能性のある駐車場の折板屋根裏側について調査・分析結果の記載なし
(5)複数の建物でパイプスペースの調査結果が不十分
(6)外壁の仕上塗材の分析が少ない
──などの不備が見つかった。

とくに(1)~(5)はいずれも危険性の高い吹き付けアスベストの可能性のある建材についての調査ミスとみられ深刻だ。

再開発組合は調査報告書について「最終成果物ではない」と留保する一方、アスベストの事前調査は「終わっております」とも説明した。解体工事を請け負ったアサノ大成基礎エンジニアリングは報告書のとりまとめ後、追加調査は実施していないと認める。

となるとやはり調査ミスの可能性が高そうだが、同組合は「確認のうえで回答する」とのこと。

板橋区は独自に定めた指針で、発注者に「アスベストの使用状況の調査と飛散防止対策の徹底」を規定。吹き付けアスベストや保温材などレベル1~2建材の除去をともなう場合だけでなく、大気汚染防止法(大防法)で規制されていないアスベストを含む成形板などいわゆるレベル3建材を除去する場合に加え、アスベストがない場合にも住民説明会などや独自の掲示を求めている。関連して区に対する事前周知届けの提出も位置づける。

板橋区環境政策課は同17日、事前周知届けが提出されているが「図面の差し替えや調査ポイントの追加があったりで、いま審査をしている最中です」と明かす。同21日でもその状況は変わりないとのことで、区における審査が完了していないと認める。

ところが、同25日から開始とするアスベスト除去について「止める権限はない」と明言。区の審査が終了していないにもかかわらず、作業が開始されても構わないとの見解だ。それでは何のための指針なのかわからない。

そもそも同社は施工計画を「作成中」で同21日現在示すことができていない。当然、区の指針で求められている施工計画をふまえた説明もできていない。

同社は「まだ内装解体とか役所の審査結果がおりてないため後ろにずれることもあり得る」と釈明する。しかし、同25日からアスベストの除去が開始される可能性もあると認める。

住民らは同21日、再開発組合に対し、現状の調査が不十分だとして施工計画を踏まえた説明会の実施や第三者機関によるアスベストの再調査・施工監理及び監視・完了検査を要望した。

再開発組合は「検討します」と答えた。ただし調査ミスの指摘と合わせ、同24日現在回答はない。下手をするとゼロ回答のまま工事が強行されかねない状況だ。

「これだけ調査の不備とみられるものがある以上、再開発組合はきちんと第三者の目を入れて、再調査や測定、完了検査などの信頼性を確保して対応すべき。いまが不適正工事を止めるギリギリの状況です」と永倉氏は警告する。

じつはこの再開発は事業費の約3分の2が板橋区の補助(うち2分の1は国負担)。それだけ公共性の高い事業であるにもかかわらず、調査が不十分なままアスベスト除去が開始され、周辺にまき散らすようなことがあってよいのか。いまが分水嶺だ。再開発組合の理性が問われている。