11月1日の住民投票を呼びかける大阪市選挙管理委員会の宣伝カー(10月19日 大阪市・撮影:矢野宏)

◆11月1日 「大阪都構想」の賛否を問う住民投票

大阪市を廃止し四つの特別区に分割する、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票(11月1日)に向け、激しい論戦が展開されている。可決された場合、4特別区だけでなく、共同で設置される「一部事務組合」が「都構想の矛盾の象徴」と指摘されている。(新聞うずみ火 矢野宏、栗原佳子)

法定協議会を37回すべて傍聴した元大阪市立大教授の木村収さん(10月19日 大阪市北区・撮影:矢野宏)

◆「一部事務組合」が「都構想の矛盾の象徴」との指摘

一部事務組合とは、市町村などが単独で処理するのは負担が大きい仕事、例えば消防や水道事業などを共同で行うために設置する特別地方公共団体のこと。協定書では150以上もの事務・事業を共同処理する例のない「マンモス一部事務組合」が生まれることになる。
「都構想」の設計図である協定書を作成する「法定協議会」を37回すべて傍聴した元大阪市立大教授の木村収さん(84)=東住吉区=が、協定書の中で問題視するのが一部事務組合の在り方だ。

特に木村さんが驚いたのは、超高齢社会において核心的な業務である介護保険事業が一部事務組合へ丸投げされたことだった。

「東京23区では介護保険事業をそれぞれの特別区が担っていますが、大阪の特別区では直接所管できない制度設計になっています。一部事務組合には議会が設置されます。それぞれの特別区で選出された議員2~3人が一部事務組合の議員を兼ね、年に2回ほどしか開かれません。介護保険事業をはじめとして多種多様で相互に関連のない事務・事業を行う一部事務組合の運営に、議会がどのように関与できるのか大いに疑問です。それぞれの特別区の利害を乗り越えて調整や公正なチェックができるでしょうか。いずれにせよ、一部事務組合が複雑で、市民の目が届かない存在になることは確かです」

街頭に立ち、チラシを配りながら対話を心がける真辺さん(10月21日 大阪市東淀川区阪急上新庄駅前・撮影:矢野宏)

◆「一人街宣」を続ける介護関係者の思い

投票日まで1週間を切った10月27日夕刻、阪急上新庄駅(東淀川区)南口で、ケアマネジャーの真辺明彦さん(53)が行きかう人たちにチラシを差し出していた。オレンジ色のウインドブレーカーの背中には「大阪市廃止反対 地域と介護を守ろう」の文字が浮かぶ。

9月半ばから一人、路上に立った。「大阪市が廃止されたら介護保険制度は崩壊する」。やむに已まれぬ思いに突き動かされた真辺さんのような介護関係者が、市内各地の街頭で行動している。

「どんなに障害が重くても、介護保険では要介護5までしかありません。実際、それだけでは生活を支えられない要介護者がいます。財源のある大阪市は『要介護5のサービス量で生活を支えることができないなら、障がい者のサービスを併用して要介護者の生活を支えてください』という施策を実践してきたのです。

ところが、協定書では介護保険事業を一部事務組合に、高齢者施策を大阪府・特別区・一部事務組合にバラバラにし、障がい者施策を特別区にする。福祉行政に関しては、二重行政以上の『三重行政』にされるのです。これでは生身の人間に責任を持って向き合える行政が不在になり、命や生活に対して相談することができなくなります」