説明に立つ松井市長。住民投票敗北なら政治家を辞めると発言している。9月26日、市中央公会堂で(撮影 栗原恵子)

◆説明会は前回のわずか5分の1

大阪市を廃止し4つの特別区に分割再編する、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が11月1日に行われる(10月12日告示)。僅差で反対票が上回り、大阪市の存続が決まった2015年に次ぐ2度目の住民投票だが、新型コロナ感染防止を理由に、市主催の住民説明会は前回の39回からわずか8回に激減している。市民の一人として説明会に参加してみた。(新聞うずみ火 栗原佳子)

住民説明会は9月26、27日、10月3、4日の午前午後の計8回、市内のホテルや公共施設などで開催。定員は300人~500人で、事前に申し込みが必要だ。定員を上回れば抽選になる。5年前に比べ、回数、定員とも約5分の1に縮小したという。

足を運んだのは初っ端の26日午前の部。会場は大阪市北区中之島の市中央公会堂だ。もし賛成多数になれば、この大阪市民の歴史的財産も、大阪府のモノになってしまう。

入口で検温、手指のアルコール消毒をして、参加ハガキと引き換えに「『特別区設置協定書』について」という説明パンフレットを渡される。カラー刷り42ページ。5年前に参加したときには、「参考意見」として賛否の意見をまとめた別刷りのA3コピーが申し訳程度に配布された。しかし、それすらもない。

◆パンフもビデオもメリット一色

松井一郎市長は「そういう形でお互い主張し合っても余計に混乱する。役所で作ったパンフレットを基に冷静に判断していただきたい」と述べたという(毎日新聞9月27日朝刊)。

特別区設置協定書(以下、協定書)は、政令指定都市である大阪市を廃止し、4つの特別区という新しい自治体に分割する、いわゆる「大阪都構想」の設計図だ。住民投票で問われるのは、この協定書の賛否である。

関係市町村の長は特別区設置を定めた法律に基づいて、協定書の内容を住民にわかりやすく説明する義務がある。そのための手引きがパンフレット。説明会を前に複数のメディアが「メリット一色」などと批判したいわく付きだ。

開始時刻の1時間前から開場し、続々と参加者が席に着く。舞台の大型スクリーンには、この説明パンフレットの動画版ともいうべき市作成のPRビデオが映し出されている。

<このたびの新型コロナウイルス感染症の危機においても、府市の連携を柱に、国に先んじた緊急対策が実施されました。しかしながら、いまのこうした府市の連携は知事と市長の人間関係に頼っているものです。これまで築いてきた府市の連携を将来に向けて確実なものにするには……>。

このような調子が続き、それが説明会開始まで繰り返し上映された。

午前10時半、府と市の共同部署である副首都推進局職員による説明がはじまった。スクリーンに説明パンフレットの図表などが映し出され、職員がそれらを早口で読み上げていく。続いて松井市長、吉村洋文知事がスクリーンを背負って説明に立った。

財政シミュレーションでは特別区の財政は赤字にはならない。財政がプラスである限り、いま受けていただいているサービスは十分守れる」。松井市長は特別区になっても住民サービスは維持されると力説。

吉村知事も「府市はかつて二重行政だったが、この10年、松井市長と僕、その前は橋下市長と松井知事でバーチャル大阪都に取り組んできた。いわば人間関係に依存した取り組みで、それを制度としてやるというのが都構想、広域行政のキモ」と「都構想」の意義を強調した。松井氏は大阪維新の会代表で吉村氏は代表代行、橋下氏は創設者である。