(参考写真)市場で買い物する痩せた軍人は将校だった。2013年8月に撮影アジアプレス

◆軍糧米の農場からの搬出に支障

北朝鮮当局が新型コロナウイルスへの警戒を一段と高めている。発熱や咳などの症状が出ただけで隔離、地域を封鎖といった強硬措置が、11月に入ってから厳格に実施されていると、各地から伝えられてきた。

とりわけ統制が強まっているのが軍隊だ。中国で新型コロナウイルスが流行した2月以降、兵士たちは休日の外出や民間人との接触が禁じられ、警務兵(憲兵)が街中を巡回して軍人の行動を監視する措置を採っていた。

しかし初夏なると、副業地(軍用の田畑)や水害復旧動員など、部隊外で作業する際に、兵士が民間人と接触して食べ物をねだったり、酒やタバコを購入したりという「規律違反」が起こっていた。軍部隊の食事事情が劣悪なことが原因だ。

11月に入ってから、軍兵士の民間人からの「引き離し」が徹底されるようになった。

兵士は一切外出禁止になっていて、あらゆる民間人との接触が厳禁された。(勤務外で)軍人が市街地を出歩いている姿を見ることはまったくなくなった」と、両江道(リャンガンド)の取材協力者は伝えてきた。

狭い空間で集団生活をするため、軍部隊はコロナのクラスターが発生しやすい環境にある。どうしても換気が悪くなる冬を前に、軍人と民間人の接触を最小化させたいのだろう。

(参考写真)市場を徘徊する兵士たち。2008年9月に平安南道安州市で撮影アジアプレス

◆「軍糧米」も農場に取りに行けない

一方、軍人の民間人からの「引き離し」は、軍の食糧確保に問題を生じさせている。例年10~11月に兵士たちが協同農場に出向いて収穫から「軍糧米」を受け取るのだが、この搬出に支障が生じているのだ。

田畑でコメやトウモロコシを刈り取りした後、乾燥、脱穀してから軍用に搬出するのだが、問題はこの作業の間の盗難だ。毎年兵士が農場に出向いて収穫物を見張り、脱穀終了後に補給を担当する後方部隊の兵士がリヤカーや車両で搬出するやり方を採ってきた。
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