【4月10日の米軍の空爆で足を失った男の子。バグダッドを制圧した米軍だが、その後も市内での空爆を続けている】(バグダッド・サウラ病院・2003年/撮影:綿井健陽)

もうひとつ、サマワが安定していて米軍に対する抵抗勢力が落ち着いているかということと、それを自衛隊派兵のゴーサインの基準にするのは変だと思うんです。

サマワが平穏であれどうであれ、派兵そのものの論理に問題があります。3月20日に始まった戦闘で、5月1日までに150人くらいの米兵が殺されているけれど、5月1日以降の犠牲者はその数を越えている。このことが派兵消極論の目安になっているのは非常におかしいと僕は思っている。

非政府系平和団体の調査でも、非戦闘員の死者は1万人を越えていて、負傷者の数はその3倍、5倍とも言われている。むしろそちらが重要で、その数はアイアンハンマー作戦で増えつつある。

全く関係のない人間がその場で射殺されるという話も聞くんです。自衛隊の派遣は住民サイドに立ってこの戦闘を停止させに行くわけではなく、むしろアメリカの意を受けて戦闘を合理化して本格的に戦闘行動に参加していくんです。

そのこと自体を問うていかねばいかん、と僕は考えているんです。僕は体調を崩して10月にイラクに行っていないので、そこら辺を綿井さんに修正してもらいたいと思っているんです。

野中
9.11以降、韓国でも日本でも派兵に関する議論が倒錯しているという感があります。アフガニスタンとイラクを見たとき、現地で最大のテロを行っている主体はアメリカなんです。アメリカが最も多くの人を殺しているという事実には反応せず、アメリカがテロに対して英雄的に戦っており、それを日本が支援するのは当然だという風潮になっています。

昨日も新聞を呼んでいたら、「お国のために一生懸命やってきて下さい」と自衛隊員の家族が話しており、自衛隊はお国のために送り出されるんです。仮に犠牲者が出たとしても、国家の英雄として扱われていくでしょう。外交官二人が殺害された時をみても、「国家的な追悼」をすることによって戦争に駆り出すという論理になっているんです。その辺りを綿井君に報告をお願いします。

綿井君はアフガンの時は北部同盟と一緒にカブールに入り、今回も攻撃前の去年3月中旬にバグダッドに入りました。僕が印象的だったのは、4月9日に米軍がバグダッドに入った時、最初に「あなた方は何人のイラク人を殺したのか」と米兵に訊きましたね。

これはなかなかできないことで、普通だったら「How do you feel?」みたいな尋ね方をしてしまうんです。この質問の背景にはイラクの被害の大きさを現場でみてきたことがあると思うんだけど、このイラク戦争の正体を話してくれますか。(続く)

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