野中章弘×辺見庸×綿井健陽 対談(5)
作家 辺見庸とアジアプレス 野中章弘、綿井健陽が、
イラク戦争と報道、そして自衛隊派遣の論理を問う
(この対談は2003年12月27日に収録されたものです)

【バグダッドを取材する綿井健陽】(2003年)

それから、これは野嶋さんが本の中で言っているんだけど、4月1日に出た記事について。彼の従軍していた海兵隊とは別の部隊が、イラク軍の陣地に迫撃砲を撃った。四発目が当たったときに自分も米兵と一緒に喜んだというんです。

その後に、「中立であるべきジャーナリストが」と書いています。まぁ、そこで中立性があると思っているところが不思議なわけですけど。彼は本の中で、その記事が読者からの反応が一番強かったと書いています。

たぶん、読んだ人たちは「記者がこんなに現場で苦労して」とか「記者の肉声が聞きたい」という気持ちだったと思うんです。

その後に、彼が書いている一番気になるところは、「エンベット取材だから色んな取材規制があったに違いない」「でも実際に記事を書いていてほとんど規制されることはなかった」と言っているところです。これが、エンベットというかアメリカが狙った情報操作の完成形だと僕は思うわけです。

つまり、記者が規制されていない、自分が自由に書いたと思っているけど実はあの190ページの本は「イラク戦争従軍記」ではなく単に「米軍従軍記」なわけですよ。そのことに対するさらなる問題は、「米軍従軍記」になったことへの野嶋さんの反省もなければ周りの反省もないということです。

もう一つは、日テレで従軍取材をした今泉さんという女性記者の人と、カメラマンの三浦さんが出ていた検証番組でのことです。番組の中で、三浦カメラマンが現場で戦争について独白する場面があります。
その中で彼はこう言っています。

「米軍について行った時に、(イラクの)子ども達が出てきて米軍に対して笑顔で手を振った。それを見るとこの笑顔は本物だよな、これはやってよかったのかなぁ」と。その後に彼はこう言っています。「もしこれをやらなかったら(フセイン政権を米軍が倒さなかったら)、この子どもたちは一生笑うこともなかったんだろうなぁ」と言うんです。
次のページへ ...