いよいよ明日投票である。即日開票され日本時間で午後十時頃には大勢がわかる。台湾の運命が決まる瞬間である。
3月13日は最後の土曜日。スーパーサタデーと呼ばれ、両候補ともに最大限の動員をはかった。与党民進党の陳水扁陣営は南部の高雄市、野党国民党の連戦候補は台北市に動員をかけ、それぞれ三百万人が打ち振る旗で市内を埋め尽くした。

幅三十メートルあるメインストリートの仁愛路は数時間にわたって連戦支持の人波で埋まっていた。台北史上最大規模のデモンストレーションだった。
掛け声は、「総統を換えて台湾を救おう」。

みんなの声や目に四年前にはなかった勢いがあった。その人波を見ながら、なにゆえに「陳水扁」「民進党」「台湾独立」は多数派になり得ないのかという大きな疑問と向き合っていた。
六年前の台北市長選、陳水扁は、このときもとりたてた失政もないのに、再選できなかったのである。

最終の支持率調査では、双方ともに40%ずつ、まだ決めていないが、20%である。これほどまでに、台湾派と中国派が全国区で真正面から激突した例はない。統一も独立もできない、国連にも加盟できないという「ちゅうぶらりん台湾」の現状を固定し支えているのは、中国の脅威などではなく、実は、台湾人自身だということが明白になった。

両派のせめぎあいは人々の心の中もその戦場としている。最終盤でまだなお20%の人が態度を決めかねている。それは、台湾人意識と中華思想の葛藤ともとれるし、台湾人としての矜持と経済的利益(中国との経済関係促進)とのせめぎあいとも解釈されよう。

台湾「国民」二千万が、ぎりぎりまで悩み選択した結果が明日明らかになる。そして、それは台湾の運命を決定付けるものになりかねない。
海外から華僑やビジネスマンが続々と帰国している。両陣営が掌握しているだけで十五万、総数は数十万人に達するとみられている。他国の大統領選では考えられない奇観である。いままさに選ばれようとしているのは、「台湾」の総統ではなく、「中華民国」の総統であることを、改めて想起せざるを得ない。
(04年3月19日)