一瞬前まで勝利を信じていた国民党連戦候補は、一報を聞いた途端に愕然としたに違いない。投票直前、何が起こるかわからないと言われながら、まさか候補者の命を狙ったテロルが起きるとは思っても見なかった。実際に、台湾はこれだけ複雑な歴史を辿ってきながら、国内において、暴動やテロはほとんど発生したことがなかったからだ。
動いた票は5パーセントとも3パーセントとも言われている。それはどちらでもよい。なにしろ、当落を分けた票差は僅か0.228パーセントであったのだから。まさに、改造銃から放たれた二発の銃弾が、天地を分けた。
予想外の敗北を喫した連戦は、自らの政治生命を保つために、「選挙は無効」と主張し、支持者に徹底抗争を呼びかけた。総統府前の座り込みは、2004/03/23午後9時現在まだ続いている。
この間に、多くの視聴者から質問が寄せられた。今日は、それらにお答えすることで、取材日誌に代えたい。

◆テロがなければ連戦が勝っていたか?
連戦は、九分九厘勝っていた。陳水扁は国会で与党が多数を占めていないため実績を作れなかった。そして中国の経済関係強化を求める声が強かった。民進党と陳水扁は銃弾に救われたといえる。

◆台湾人意識が高まっていたときいたが。
「私は台湾人です」と答える人が増えているが、それは、「台湾人意識を持った中国人が増えた」といったほうが正確かもしれない。台湾の人たち、特に戦後派の人たちのなかに、「中華」はしっかりと根を下ろしており、それを捨て去る勇気を彼らはまだもっていない。戦後台湾は、もっとも純粋な中華思想の注入が徹底しておこなわれた地域である。その点を見落としては情勢判断を誤る。

◆投票率が八割を超えているのはどうしてか。
米国大統領選でも、日本の総選挙でも、向こう数年間の国政を委ねるに過ぎない。台湾の選挙は、文字通り「国家」の存亡をかけている。さらに選挙の様相が、いわゆる「ムラの選挙」である。とてつもなく大きいムラの首長を選んでいるのだとして眺めると、いろいろ説明がつくことが多い。