ゴールデンウィーク中、日本からの客人が相次ぐ。
いっしょに総統府の近くを歩いていた人が、「あれは何ですか。なんか売っているのですか」と指差した。交差点にたくさんの国旗を並べ、その前で十人前後の人たちが、走り去る車に誇示するかのように大きく旗を振っているのである。なるほど、路上の物売りに見えないこともない。

これは、いまや台北名物になっている「総統府前の国旗振り」。先の総統選の無効を訴える活動の一環なのである。不法集会をいつまでも続けるわけにもいかず、彼らは連日交代で、ただひたすら、こうして旗を振り続けている。晴天白日(国民党のマーク)がついた国旗を、である。

以前に、総統選後の混乱は、「中華民国」という「虚構の国家を守らんとする信仰に近い」と評したことがあったが、まさにそれを象徴するかのような行為である。「受難」をも想起させる。

5月20日の就任式が近づいた。当日は、米国を始め、一定の諸外国の代表も参加する。国交がある中南米の数カ国は元首を送り込む予定だ。それらの国の大使館に「もし参加したらテロ攻撃する」と脅迫電話をかけていた男が今日つかまった。さらに、総統を刺すと公言していた人物も逮捕されている。軍事クーデターや無線操縦の飛行機が会場を攻撃するといった噂も流れるなど、不穏な動きが絶えない。無論、当局は厳戒態勢をとっている。

式典の最中、正副総統は防弾チョッキを着用する。すでに真夏の陽射しが振り注ぐなか、いささか肥満気味の両主賓にいかなる服装をさせるのか、これも話題の一つである。

全国から動員される参加者は二十万人。そのためにすでに三千台近いバスがチャーターされ、防衛と身分チェックのために各車に警官が同乗してやってくるという。
どのような形で当日を迎えるのか、重い不安が町を覆っているが、そのことを声高に話す人はいない。気になるから、テレビを見ないようにしているという人も多い。斡旋業者には、移民の問合せが増えているとも伝えられている。
(04年5月5日)