竏停・「勢力」とは政治的派閥なのか?
李 党、軍、公安機関、工作機関などの組織が、そのまま利権集団にもなっている。各々の組織内でももう少し細分化された利権集団がある。政策や理念とは無縁のものだ。

竏停・日本側の交渉のやり方をどう見たか?
李 外交交渉を外務当局同士でやるのは当然だが、北朝鮮の組織構成は極度に垂直的で、横の水平的繋がりは薄い。あらゆる組織がトップに金正日を戴いて縦に動き、組織間で互いに干渉できないようになっている。外務省は工作機関に対し何の指示命令もできない。工作機関は相当抵抗したはずだ。実務者協議は日本側のしかるべき人物や機関が、党や軍の工作担当部署と静かにやったほうが良かったかも知れない。その場合は、人命救出が優先される代わりに、真相究明は次代に回すという取引が必要になるだろう。惜しまれるのは、03年9月の小泉訪朝直後に拉致問題専属チームを大量投入し長期に平壌に常駐させるという方法を採らなかったこと。間髪いれずに一気に動いていれば、隠蔽工作をする隙を与えず、また組織間の足の引っ張り合いから来るもたつきも避けられ、被害者救出がスムーズに進んだ可能性がある。

竏停・経済制裁の効果は?
李 制裁が圧力として効果があるのなら発動してもいいだろう。だが、貿易規模を見ても実際には効果は見込めない。ますます中国の影響力が強まる。制裁発動すれば、金正日政権は「やめた」と背中を向けるだけだ。あの政権に国際常識は当てはまらない。また金正日政権の国内外での政治的立場を強化してしまう可能性がある。貧しく閉鎖的・強権的なあの体制には「敵」の存在が必要だからだ。「日本の北朝鮮敵視政策は制裁という戦争の一歩手前まで来た」として日本を敵役に仕立て、内外で緊張高める戦術取るだろう。配給停止や物価高騰などの内部矛盾をすべて日本のせいにできる。それは日本政府もわかっいるはず。私には日本こそが経済制裁発動に一歩一歩追いつめられているように見える。

竏停・今後の見通しは?
李 今回の「ニセ遺骨」の件も、政権内部では責任の押し付け合いが始まるだろう。担当が総替えになるかもしれない。金正日政権を酷い、汚いと非難するのは簡単だ。それを突破してどうやって安否不明者問題を解明するか。貧弱か、虚偽の死亡証拠では通用しないことは北朝鮮にも分かったはずだから、いつか必ず真相に近いものを得られはず。時間がかかるのは被害者家族には苦痛だろうが、決してあきらめずに解明を求め続けるべきだろう。
(了)石丸次郎 拉致問題を考える3回へ

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