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さて、かつての蒋介石・経国父子の時代、学校や役所を始め台湾の隅々に彼らの銅像が点在していたのだが、あれらはどうなったか...。台湾では、フセインさんのように倒されることはなく、国民党が野党になっても、銅像はそのまま鎮座し続けていた。だが、さすがに時代に合わなくなってきた。

そういう場合の台湾の人たちのやり方は、夜中にそっと「切る」という手法である。なんだか日本時代の鳥居の端っこを切り落としてそのまま使おうという発想に似ている(そのため台湾中に変形した鳥居が残っているのだが)。

根元からばっさり切り取られた銅像が密かに集められたのが、台北のお隣り桃園県慈湖の空き地だった。実は慈湖にはすでに本物の蒋介石が眠っておられる。彼は故郷の中国に帰りたいと台湾での埋葬を望まなかったため、火葬されることなく、当地に生身のまま安置されているのである。

慈湖には続々と各地の蒋介石さんが集まってきた。軍服姿もある。普段着もある。笑っているのも、いかめしいのも、馬に乗ったの、大きな椅子に座ったの、まさに百花繚乱。やがてうわさを聞きつけて、市民が見学に訪れるようになり、いまや駐車場に大型観光バスが往来する観光名所に化けた。その名も「蒋公彫塑記念公園」。

現在銅像の数、百十余体。さらに台湾中の軍事施設にある銅像が撤去されると、その数一千体以上とも言われ、広い公園も、またたくうち蒋介石父子で埋まってしまうことだろう。
昨年は蒋介石逝去三十周年。記念切手までが発行される人気ぶりで、混迷する政局の中、台湾の独裁者は、ますます元気いっぱいである。
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