爆音のない静かな空を!
~厚木基地周辺住民、半世紀の訴え~ 第18回  【吉田敏浩】

【東京高裁での原告側勝訴判決後の集会】

【東京高裁での原告側勝訴判決後の集会】

第4次騒音公害訴訟へ
こうした住民による騒音公害訴訟に、地元自治体である大和市と綾瀬市も行政の立場から、資料や意見書を提供するなど理解を示してきた。
そこには、航空機騒音と事故の危険性は市民共通の深刻な問題だとの認識がある。第2 次訴訟の横浜地裁での公判では、当時の井上孝俊大和市長が証人として爆音被害の実態を証言もした。

大和市と綾瀬市は日米安保の必要性は認めているが、人口過密都市の中にある厚木基地の機能縮小と全面返還、騒音解消、NLP の硫黄島全面移転などを、日本政府と米軍に要請し続けている。騒音が激化すれば、そのつど米軍に抗議もしている。

第3次訴訟原告団の事務局長で厚木爆同副委員長の藤田栄治(73歳)は次のように話す。
「爆音は違法の判決が繰り返され、第3次訴訟の東京高裁判決で、違法状態にある爆音を放置してきた国の責任が厳しく追及されても、米軍機と自衛隊機が飛び続けるかぎり静かな空は取り戻せません」

【市街地上空を飛ぶ自衛隊のP-3C対潜哨戒機】

【市街地上空を飛ぶ自衛隊のP-3C対潜哨戒機】

「だから、損害賠償請求と合わせて、一部原告による夜間・早朝飛行差し止め請求もする第4次訴訟を、今秋をめどに起こすことにしました。住民に広く呼びかけて、できれば1万人近い原告を集めたいですね」
第1次訴訟からずっと弁護団に参加してきた中野新弁護士(63歳)は、「第4 次訴訟では飛行差し止め請求を民事訴訟と行政訴訟の両方でおこないます」と説明する。

「これまでの訴訟では、米軍機に日本の裁判権は及ばないという判決が出ています。しかし、厚木基地の管理権は1971年に日本政府に返還され、航空管制権も日本側にあり、管制業務は自衛隊がしています。日米安保条約と地位協定にも、米軍が日本の国内法に従うべき義務の規定があります」

「だから米軍機の飛行の制限規制は法的には可能なんです。騒音被害をもたらす米軍機の飛行を制限規制するよう、国が管理権・航空管制権を適切に行使していない点を、裁判では追及するでしょう。自衛隊機の場合、例えば自衛隊法には航空機による災害の防止の規定があるのに、騒音被害をもたらす飛行を放置しているのは公権力の行使として不適切だと追及することも考えています」

(文中敬称略)
~つづく~
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