一層柔らかくなった声に、やっと落ち着きを取り戻したパク大佐は、受話器を耳から離してソファーに腰掛け、背中を背もたれにゆっくりとあてがった。
仕方なく「ソウル女」の頼みどおり、自分の部屋にこもってビデオに夢中になっている息子を大声で呼んだ。
「チョルミン、ソウルから電話だぞ!」

息子が電話を終えてリビングに出てくると、それまでソファーに座っていた父はあきれたような、驚いたような表情で尋ねた。
「お前、いつから『ソウル女』と仲良くなったんだ?」
顔を赤くした息子は、少し目を伏せてあっけにとられたように言い返した。

「いきなり『ソウル女』ってなんだよ、『ソウル女』って! 最近の平壌の女の子は、みんな南朝鮮の言葉を使いたがるじゃないか。流行だよ」
「何!? 南朝鮮のまねをしてるってことか?」
父の突拍子もない言葉に、息子は何も言わず自分の部屋にすっと入ってしまった。

「あらら、大佐さんともあろう人が、どうしようもないな」
こんなふうに、自分の部屋で鼻歌を歌う息子に向かって、パク大佐が言った。
「この野郎、どうしようもないのはお前たち若造だ!」
そうブツブツ言って食卓にもどり、パク大佐は皿に残った冷麺の汁を一気に飲み干したとさ。
記者リ・ジュンによって2006年11月に提供された情報をリュウ・ギョンウォンが整理した。

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