取材中のリムジンガンの記者 シン・ドソク(左)

取材中のリムジンガンの記者 シン・ドソク(左)

 

20代から30代の若い男性3人が、酒の席で「理論食事」に熱中している。
「理論食事」とは、美味しい料理、豪華な料理をテーマに話に花を咲かせることを言う。食糧難の続いた北朝鮮では、庶民にとってうまいものを食うことは、想像上の出来事になってしまっているわけだ。
酒が回れば、「理論食事」をつまみに、また話が弾むのだ。食べ物の話から出てきたのが、収容施設に入れられれば飯が食えるという現実の話だった。
トクス:俺が中学校一年の時は10ウォンあれば干しタラを3匹は食べられたものだ。

ヨンギル:そうだね、先輩の家は「共産主義」を味わった方なんだな。
ミョンハク:うんうん。干しタラをビールのつまみにしたものだ。

トクス:よかったよな本当に。タラ、ホッケ、イワシなんか、水産物(国営水産物商店)の人たちが街中を回って「買ってください」と売り歩いていたんだから。
ヨンギル:ほんまに大昔のことだよ。僕が学校に通ってた頃には、そんな話題が出てもピンと来なかったもんなあ。昔話のようなもんだよ。
ミョンハク:野菜もだ。祭日になると、家々を訪ねて回って「野菜買ってちょうだい」と売り歩いていた。あの頃は、青果店に野菜や果物が山のようだった。それでも売れ残るので、人民班を回ってタダで配っていたのを食べたもんだ。それが、今ではどうなってる?
トクス:祭日の人民班供給(注1)もよかったよな。無条件に豚肉1キロ、それから…

ミョンハク:ネクタイ締めた酒1本!(注2)
トクス:食用油は世帯毎に一人当たり50グラムずつ。それから飴にお菓子に…
ミョンハク:靴も、大人用も子供用もあった。家庭で必要な物は、何でもちゃんと配給してくれた。マッチもタバコも。それが今のザマはなんだ。
ヨンギル:なんたって労働鍛練隊(注3)が職業になるご時勢だからな。
ミョンハク:何だって?
ヨンギル:労働鍛練隊ですよ

ミョンハク:ナニ!?労働鍛練隊がお前の職業だって?ハハハハッ…
ヨンギル:俺は今、職場の班長の奴が作った報告書のせいで、労働鍛練隊に行けと言われてるんです。
トクス:行け行け!根性叩きなおしてもらえ。一度そういう所に行けば革命化されるんだ。
ヨンギル:飯を食わせてくれるから行くんですよ。
トクス:革命化が済めば幹部に登用してもらえるらしいぜ。
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