APN_080321_yanagimoto_DSC02.jpg「帰国投票」
続々と海外在住の台湾人が帰島している。明日の投票のためである。もちろん個人で桃園空港に降り立つ人もいれば、隊列を組んで候補者の旗を振って帰国する人もいる。わけても芸能人たちは台湾につくやいなや、それぞれの陣営に呼ばれて選挙活動に参加しなければならない。

そうした帰国投票の波というのは、ちょっと日本などは考えられない、中国人・華人圏ならではのことであるが、やはり馬英九支持者が優勢のようだ。
ある芸能人が舞台の上で、馬英九を支持する芸能人は「人」じゃないと言ったとか、言わないとかで告訴云々という騒ぎになっている。
この「人」騒動は、数ヶ月前にもおきた。馬英九が、台北在住の原住民を前に、あなた方も同じ人間だ。台北に出てきたのなら台北人と認めて、いい教育を施してあげよう。そうした意味のことを言った。

いかにも人民を慈しむ漢人政治家らしい本意なんだろうが、原住民からはいっせいに反発の声があがった。あんたに認めてもらおうともらうまいと、本来我々は人類なのだ。まして漢人に教育(感化)を施してもらう必要などない。当然の声である。
この間、こうした「失言」(つい本意を言ってしまうという意味で)騒動の繰り返しである。

戒厳令解除後に育った台北の若者たちは、たいへんまともな人たちが多い。彼らにはこの見苦しい騒ぎが耐えられないのである。若者たちのノンポリ化は必ずしも彼らの責任ではないだろう。
バスの中で、明らかに「緑」とわかる人が、前の道路を「藍」のデモ隊が渡っているのをみて、両手を振り上げて激しく罵り始めた。
目に入るのも嫌、近づくだけでも虫唾が走る、というこの両支持者の根深い憎悪を解かない限り、台湾の若者も郷土に明るい未来図を描けないのではないか。

投票開始まであと二十時間ほどである。緊張はあっても町は静かだ。
馬英九は今晩も中南部に張り付くらしい。毎日上手とはいえない福建語(南部の人たちが多用する地方語)を操っての演説を続けている。それはそれで見上げたものである。

李登輝前総統と李遠哲ノーベル賞受賞者が謝長廷支持を表明。いまさら、どういう意味があるのだろうか。
国民党の最後のテレビコマーシャル。各地方自治体の首長が登場して、改革を呼びかける。これだけ国民党に包囲されていたのかと、改めて実感させるが、彼らのほうが「変化」「改革」を叫んでいるのが面白い。
10%。これがある友人と予測した票差である。というより、どちらが勝ってもいいから、僅差にはならないで欲しいというのが実感なのである。

★新着記事