道路工事現場(2003年9月恵山市 アン・チョル撮影)
道路工事現場(2003年9月恵山市 アン・チョル撮影)

 

発電所建設現場に一台の高級乗用車が支援物資を積んで現れた。
「おい!また物資が来たぞ!」
シャベルを持って、だらだらノロノロと作業をしていた突撃隊員たちは(注1)、喜び勇んでどっとその乗用車の周囲に集まった。
今度は何を積んできたのだろう…興味津津の様子だ。食べ物を積んできたのか…?キムチか?それともブタ一匹をまるごと…?
関心のターゲットは、乗用車のトランクの中にあるので、誰にも分かるはずがない。

さて、どんな人間が物資を持ってきたのだろう。皆が注意を向けると、車から降りて来たのはコプチェ(注2)だった。
「ほほう、コプチェが?」
乗用車を取り囲んでいた人々は、車から降りてきた背の低い男に向って、蔑みの笑いを投げかける。
コプチェの男は目を細めた後、氷のような冷たい表情をしたまま周囲を一喝するように見回すと、低いがはっきりとした声で、一言ずつ申し付けるように言った。

「お前らなんか、図体は立派でも食い物にも困ってるじゃないか」
コプチェのその一言で、その場の者の表情が一変した。
考えてみれば、まったくもってコプチェの言ったとおりだ。図体は立派でも金がないので、ろくな物も食べられないのに、嫌というほど働かされている。
あいつはコプチェでも金があるので、自分だけでは食べきれなくて、こうして支援物資まで積んで来てくれるのである。

朝鮮には「口はゆがんでいても言葉は真っ直ぐに出てくる」ということわざがあるではないか。体が不自由だからと、陰口を叩いたり差別したところで何の意味があるだろうか。

図体は立派な突撃隊員たちこそが、コプチェ男の支援物資の施しを受け取て生きて行かなければならない。それが今の朝鮮なのである。
(資料提供:2006年9月 リ・ジュン 整理:リュウ・ギョンウォン)

注1 突撃隊 青年団体や職場などに組織された「動員部隊」。工事現場や復旧作業などに無報酬で投入される。一定期間勤めると職場配置や労働党入党などに有利な取り計らいがある。

注2 コプチュ 背骨が後ろに湾曲して弓状になる病気の人の蔑称。日本語の「せむし」にあたる。

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