「上官らの不適切な言動も含めた指導・教育の過程を全体としてみる限り、社会的に相当な範囲を逸脱しているとまでは言えず、違法・不当ないじめ行為があったとは認められない」
「自己の能力不足を嘆く鈴木は、上官らによる厳しい指導・教育が続くなかでストレスを募らせ、慢性的な睡眠不足の状況下、過剰ともいえる勉強を繰り返した結果、精神的疲労を募らせた。演習航海に出たことによる精神的な圧迫感や閉塞感も手伝って、精神的な疲弊状態を一層悪化させ、自ら命を絶ったと推察される」

「鈴木の様子から自殺の可能性があることまで予見するのは困難で、上官らに自殺を防止すべき安全配慮義務違反があったとは言えない」
判決後、防衛庁(現防衛省)は「防衛庁の主張が認められ、裁判所の理解が得られたものと評価している」というコメントを出した。

判決では、上官らの「不適切な言動」が指摘されながらも、それが「厳しい指導・教育」の枠内に位置づけられ、いじめの存在は否定されている。
しかし、「厳しい指導・教育」というが、される側の当人がいじめだと深刻に受けとめていた点からして、職務上の地位を背景にしたパワーハラスメントの一種ではなかろうか。

これでは、当人の気持ちを無視して、個人を歯車のように使う組織の側の視点に立った判決だとしか思えない。
技能不足という点についても、自衛隊側の主張ばかり取り入れられた結果の判断ではないか。
「とても残念な判決です。自衛官一人ひとりが人間として大切にされていません」(佳子)
判決に納得できない両親は、2005年7月、福岡高裁に控訴した。~つづく~

(文中敬称略)

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