種まき前の草刈り作業に出てきた農民たち。山の斜面の狭い土地も利用する姿は痛々しい。(2005年4月 中国側から石丸次郎撮影)

種まき前の草刈り作業に出てきた農民たち。山の斜面の狭い土地も利用する姿は痛々しい。(2005年4月 中国側から石丸次郎撮影)

 

我が国の経済動向 9
出口の見えない食糧政策
リュウ・ギョンウォン:農場は本当に悲惨だ。それで、農村の破壊された生産力の代替案が、あの「六か月土地」(注1)制度なのか?
ケ・ミョンビン:「六か月土地」のような自力更生式の食糧生産政策も現実的でないのだ。
協同農場式(中国の人民公社式)農業政策の失敗は、すでに七〇年代には公式に認められていた。だから、全人民による農村支援動員制が取り入れられたのだ。

二〇〇四年から本格実施した「農業改善策」もまた、支援動員のやり方の変形にすぎない。都市機関、企業所などに対して、従業員数と一人当たりの食糧配給量、そして土地の平均収穫量を考慮して、協同農場の低質耕作地を臨時分譲した。
それは、都市の人員に食糧を直接生産させようとするいわゆる「自力更生措置」であった。

人民軍が出した「祖国保衛も建設も農業も、私たちがすべて引き受けよう」というスローガンの延長線上にある「全民の農民化」とでも言えようか。
生産の分業化を無視したこの措置は、農耕地を管理維持しつつ、都市に過剰になった企業所の労働力を、農業生産労働力として投入しようというのが主な目的だった。

都市にある私の単位(勤める企業)も、土地一五町歩(約一五ヘクタール)を運営してみたが、やはりちゃんと機能しない。企業所で耕作しても、生産に投資できる財力は農場と同じくゼロだ。個人耕作ならともかく、企業所の食糧を生産しようという場合には、技術など管理問題に対する専門性も必要だ。
また、ジャンマダン経済が蔓延している現在、農業で何が儲かるかという打算的な利益追求が生じたのも生産にマイナスになった。
これらのことを国家の政策は全く考慮していなかった。

それなのに、農地を受け取ったために、今度は軍糧米を一町歩当たり一・五トンずつ出せというのだ。現在の水準で、米一町歩当たり三トン取れれば豊作と言えるくらいなのに、その半分の米一・五トンを取られていたのでは、そんな経営がジャンマダン経済の今、やっていけるわけがない。

都市が、いや全国のジャンマダンが、むしろ農村の現実の深刻さを知る機会になってしまったと言おうか。だから、初年度の収穫で、早くも「お昼の弁当代にもならない」という結論が出た。分譲された土地に移動して作業するのに、一回に弁当一つ持っていくということは、生産原価がそれだけかかることを意味する。

結局、国内で必要な食糧生産をするための、適切な改善方法を今もって朝鮮は持つことができないでいる。
それでは外部から持ち込まれる支援はどうなのか。もう一つの食糧入手の道は、外国からの支援米だ。国家がこれを受け入れて分配しているのは、おおよそ年間一〇〇万トンほどではないか。その量では国内生産の不足分約二〇〇万トンには程遠い。

朝鮮の年間最小必要食糧は五〇〇万トンだ。国内生産量と外国からの支援量をすべて合わせても、この絶対量に到逹することができない。
需要と供給が量的に合わない場合、国家の機能がより重要になるはずである。外国から朝鮮人民に食糧を寄贈して来たなら、それを支援の対象者に正しく供給すれば経済は正常化に向かうだろう。

しかし、ジャンマダンがどんどん拡大している上、国家の統制能力は緩んでいて権力者たちの不正腐敗が横行している。支援米は横流しが常態化し、本来の支援の効果は激減している。
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