咸鏡北道茂山郡の中心部。背後の山は鉄鉱山 2005年8月中国側から石丸次郎撮影

咸鏡北道茂山郡の中心部。背後の山は鉄鉱山
2005年8月中国側から石丸次郎撮影

 

北朝鮮国内で伝染病流行の兆しが見える。食糧価格の高騰に加えて、正体のわからない病気の発生は、人々の心理をいっそう不安にさせているという。
食糧価格は、いったん落ち着きを見せているようだが、依然「高値安定」である。
相変わらず地域差があるのが気になる。
(整理 石丸次郎)

伝染病の情報が最初にもたらされたのは、朝中国境の街、咸鏡北道茂山(ムサン)郡からだった。5月20日、茂山在住の取材協力者から電話報告あった。
曰く、「10日ほど前から、突然熱病が流行り始めた。高熱が出て、下痢をする。死人も出ており、伝染病の可能性があるからと、当局が患者の隔離を始めた。人々は食糧価格が急騰する中で熱病まで流行り始めたことに、急に不安を覚えはじめ『苦難の行軍(90年代の一大社会混乱)がまた始まった』と囁き始めた」

この翌日、取材協力者自身も熱病にかかって入院したと、家族から連絡があった。正体不明の伝染病については、「鳥インフルエンザだという噂が広まっている」という。鳥インフルエンザなら一大事だ。しかも人に伝染しているなら大事件である。確認作業に入った。

◆茂山郡
5月24日
大人よりも子供の発病が多い。託児所、幼稚園での発生多い。
38度超える高熱、咳、下痢、食欲不振
茂山郡病院の医者に訊いたところ「鳥インフルエンザだと思う」と答えた。

5月26日
流行しているのは「鳥インフルエンザだ」という話が住民の間で広く噂されている。託児所、幼稚園、人民学校で予防注射が始まった。
感染源について、清津市と茂山郡の政府と党では、中国に行ってきた人ではないかと考えて、追跡調査して血液検査を施しているという。しかし、一般住民の間では、中国ではなく、南部地域の養鶏場で感染したものが北上してきたという噂が広まっている。
清津市と茂山郡の市場では、鶏肉と卵の販売が禁止されたという。

◆会寧市
5月26日
会寧市病院の総合診断担当医は「流行っている病気は鳥インフルエンザ。死亡率は極めて高く、50%にもなる。効果的な対策なく患者は家に帰して隔離している」と語ったという。
子供が多く罹っているという点は茂山と共通している。
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