清津市の輸城(スソン)川の河原で休憩する軍部隊。軍隊でも日常的に食糧が市場に横流しされるため、末端の兵士の栄養状態は良くない。(2006年8月 リ・ジュン撮影)

清津市の輸城(スソン)川の河原で休憩する軍部隊。軍隊でも日常的に食糧が市場に横流しされるため、末端の兵士の栄養状態は良くない。(2006年8月 リ・ジュン撮影)

 

我が国の経済動向 12
外の世界の知識や情報の欠如
石丸次郎:今日の経済的な問題点は、言論や学問の自由がないことに帰結するのだろうか?
ケ・ミョンビン:現在明らかなことは、国内経済難の打開も改革も、世界の知識と情報に対する自由な研究ができない今のように孤立した状態では、結局不可能だということだ。私は、まさにこの問題から解決しなければならないと思っている。

とりあえず、目の前の困難を乗り切るために、食べ物の支援を受けることも必要だが、経済知識や現代文化、そして合理的な生産技術を受け入れるための力を持たなければならない。ジャンマダン(市場)をもっとよく整備して、市場経済の体系を整えていきながら、外国の物質的支援を、できるなら工場や生産設備として受けるようにしなければならない。
たとえ低水準の遅れた産業であっても、外国と朝鮮のどちらにも利益になるような、そんな業種から始めて、少しずつ経済と社会復旧の助けになる方向で援助を受けなければならない。

朝鮮が自分の努力で立ち直ることができるように、生産労働の元手とともに、再生産をしていくための知的、及び物的手段を支援してもらわなければならない。
今の朝鮮で胸が痛むのは、人々が生きるために有益な知識と情報を手に入れる機会が、ジャンマダンによる物質的刺激以外に、ほとんどなくなってしまっている点だ。

朝鮮は、結局、誰も何もわかっていないから、「政治が経済に干渉して指導、統制しなければならない」というような、政経一致を当たり前のことと思いこんでいる。
その結果は、(労働党式の)革命を続けてボロボロの暮らしを続けるのか、国際経済に飲み込まれてしまうのかという、国家にとって危険な二つの道だけが残されているような状態だ。朝鮮で人々がよく口にする「こっちに進んでも死ぬし、あっちに進んでも死ぬのだ」と言う自暴自棄の気分が社会に蔓延している。

巨大な中国を見るがいい。共産党が経済に対する直接指示をあきらめただけで世界的に成功したではないか。朝鮮がこれほどまでの苦労を経験しても、いまだにひどい現実を悟ることができないでいるのは、まだ苦労が足りないからだというよりも、自由な経済研究討論の場がなかったからだと見る方がずっと的を射た話だろう。

石丸:もっと具体的に言うと?
ケ:無知蒙昧におとしめられた朝鮮社会は、対立する利害関係によって、道徳も倫理も制度も法も、すべてでたらめになってしまう構造ができてしまった。
簡単に例を見てみよう。企業所の支配人など経営幹部は制度的な窃盗犯だ。彼らが犯す「経営犯罪」は、基本的に検察、警察、党で扱う。(政治警察の)保衛部は、経済事件が政治問題と繋がっていなければ関与することができないようになっていて、そちらの方へなんとか引っ張ろうとする。
朝鮮の経営幹部たちはどうやって「経営犯罪」を犯すのか。
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