家庭畜産(注4)の占める部分も小さくないが、食糧供給源の分類ではジャンマダンに分類される。
次に穀物の消費形態について簡単にみてみよう。消費項目は大きく分けて次の五つに分類される。

A 食糧用消費
(一)主食用 ご飯類、お焼き類、餅・パン類、麺類など
B 工業加工原料消費
(二)飲食用 糖果類、酒類、商業用食材(腸詰、豆腐飯など)
(三)肉および卵生産用飼料
(四)非食品加工用材料 接着剤、粘結剤、石鹸、火薬など
C 貯蔵
(五)国家・機関・個人の戦略的および商業的目的による貯蔵
筆者は現在、ほとんどの穀物が(一)(二)(五)の形で消費されていると見ている。
次に消費の量的構成について紹介しよう。
〈表1〉は生産された穀物の全量が(一)(二)(三)の形態でのみ消費されると仮定し、韓国農村経済研究院が今年出した各種の統計値を検討したものである(人口二三〇〇万人で計算)。

〈表1〉 各種の統計値に対する1世帯あたり(4人家族)の1ヶ月穀物消費量

    1年間の穀物の
総量
(単位 万トン)
1人当たり消費できる
年間穀物量
(単位 Kg)
4人家族が1ヶ月に
消費できる量
(単位 Kg)
1 100万トンの国際支援を
受けた九五年の生産量
260 113 38
2 平均生産量 409 178 59
3 加工も含めた最少必要量 520 226 75
4 全ての需要を満たす量 650 283 94

2008年、韓国農村経済研究院発表の各種統計値に基づく

筆者がここ数年間にわたり朝鮮の住民に行った調査によると、家族四人の平均的な世帯なら、トウモロコシに換算して一ヶ月五〇キロあれば「何とか食べていける生活水準」であるという(注5)。
ところが、朝鮮で一ヶ月に五〇キロ以上の食糧が入ってくる世帯は、全体の三〇縲恷l〇%に過ぎないと思われる。またその四分の三から二分の一の世帯が五〇~六〇%にのぼり、二分の一以下の世帯も一〇縲恣Z%ある。

この数値に基づき、人間が食べられる量に限度があることを鑑みつつも、多めに見積もると、全国の実質年間消費量はわずか二八五万トンである。
これは、〈表1〉で見ると項目1と2の中間くらいの数値である。

この数値は「一人一日平均消費食糧を四五〇グラム、全国の一日消費食糧を一万トン(年間三六五万トン)」とする朝鮮の糧穀消費量の一般的な見方とそれほど大きな差はないと言えるが、他の統計値と比較すると偏差が一番少ない。
二〇〇七年の朝鮮の穀物生産量を三〇〇万トンとする国連食糧農業機関(FAO)の報告がある。

朝鮮について調査してきた筆者としては、FAOの調査が正しいとするならば、朝鮮には、三〇〇万トンから先にあげた消費量二八五万トンを差し引いた一〇万トン以上の穀物が常に貯蔵されていると考えざるを得ない。

食糧に関する国家の統制機能が著しく低下している昨今の状況を考慮すれば、消費項目(五)のような「国家の統制が正常に機能していない機関と個人の商業活動による貯蔵」が、貯蔵分の大部分を占めていることが考えられる。
消費食糧が不足している社会で、これほどの量の食糧が貯蔵されているというのは、非合法な食糧取引が活発化していることを示しており、肯定的に捉えるならば、「市場経済を学習していることの証」だと評価できるかも知れない。
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