(つづく)

注1 朝鮮の平均的な労働者の収入の目安は中学校の教師の給料で、現在二〇〇〇縲恷O〇〇〇ウォンである。市場でこの金額で購入できるのは、白米なら一キロ程度。ソバ三縲恁ワ杯、布製の靴なら「半足」しか買えない。
もっとも高額の現金を支給される鉱山の採掘担当の労働者の月給でも、一万五〇〇〇ウォン程度である(二〇〇九年一月現在一〇〇円は約四〇〇〇ウォン)。

最高給の労働者の月給でも必要最低限の消費物資すら満足に購買する力を持たないのが実態だ。そして、この程度の金額でも多くの職場で支給は滞っているのである。
意味がないなら、国家が定める給料制度は止めたらよいのにと考えたくなるのだが、実際に支給されているかいないかに関係なく、朝鮮の労働制度は食糧配給を前提としているため止められないのだ。

食糧配給は無料ではなく、一キロ当たり四四ウォン前後を支払わらなくてはならない。つまり、購買力としては意味をもたない月給は、食糧配給を受け取るために必要な規定の手数料として存在しているのである。
実体として食糧配給システムはマヒしたままで正常に機能していないのだが、制度としては維持されている。朝鮮における労働とは、対価として生活をしていくための現金を得るためではなく、配給を受けるためものになっている。それは結局、「食べ物をやるから言うことをきけ」という、食糧配給を利用した統治のやり方と一体のものなのである。

注2 二〇〇二年七月一日に発表された新経済政策。社会主義原則を守りながら、環境の変化に合わせて最大の実利を図る、として大々的に導入された。
「1.形式にすぎず実態を反映していなかった規定賃金、公定物価を実勢レベルに一律に引き上げる。
2.企業の裁量権を拡大し自立経営を促す。
3.拡大を続けてきた闇市場を閉鎖する。
4.食糧などの人民消費物資を、再び国家による供給体系に戻す」などを断行しようとした。
企業に採算性を求めるなど、一部に改革的性格が見られため、日韓の研究者、メディアの中に「北朝鮮式経済改革」と評価する意見が数多く見られたが、実体は「経済改革」とは程遠いものであった。
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