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【さまざまな現場で派遣労働者が働いている】(写真と本文は関係ありません

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第6章
派遣労働者たちの声と姿を通して

日雇い派遣を経験してみる
私は派遣労働について少しでも知りたくて、自分も人材派遣会社に登録してみることにした。インターネットで調べると、数多くの派遣会社のホームページに、「1日~OK!勤務日はお好きな日を選んでいただけます。履歴書不要の簡単登録。未経験者歓迎。全額日払いOK!」といったキャッチフレーズが並んでいる。

2月4日、自宅のある私鉄沿線の派遣大手の営業所を訪ねた。小さな貸しビルの一室で、看板もなく目立たない。若い男女の社員が4人、パソコンに向かったり、電話をかけたりしている。登録と就業の説明を受ける。
派遣労働者は各自のIDとパスワードを持ち、携帯やパソコンで会社のサイトにアクセスし、各自専用ページにログインして仕事を選ぶようになっている。履歴書は不要で、登録用紙に住所氏名などを記入した。説明はきわめて事務的で、マニュアル通りとの印象である。仕事内容の希望を聞かれたので、ピッキングのような軽作業を挙げておいた。

「安全教育」として、「港湾運送・建設・警備・医療は労働者派遣法の禁止業務、当社規定の禁止作業は車輛の運転と建築物の解体と1.5メートル以上の高所作業、もしも派遣先でそれらの仕事を求められたら、断って、営業所まで連絡するように」と言われた。
そのほかに、「手元足元に注意し、無理をせず、派遣先の指示に従うこと」などを指摘された。以上の諸注意が書かれた書類に署名・捺印を求められ、「安全教育」は5、6分で終わった。実に心もとない「安全教育」だ。人材派遣業における労働者の安全への配慮の度合いがうかがえる。

仕事はすぐにあると思っていたが、専用ページにログインしてもなかなか仕事情報が入ってこない。ようやく、「2月9日、食品工場でのおにぎり製造補助、12時~16時、時給850円、1名」という情報が入り、日程的にもう待てないので行くことにした。派遣登録の際に、「いまの時期は仕事が少なくて」と言われたのを思い出す。

派遣先には15分前に到着の指示通り、工場の事務所を訪ねた。挨拶もそこそこに、すぐロッカールームで白ずくめの衛生作業服と帽子とマスクを着用してと言われる。他の派遣会社からの労働者(30歳台らしき男性)とともに、若い女性社員の後について急ぎ足で作業場に向かう。入念な手洗い、アルコール消毒、エアシャワーでの塵落としをする。

50人近くがあわただしく働いている。若い女性や中年女性のパート労働者が主力らしい。スーパーやコンビニで売られるおにぎり、巻き寿司などを作っている。炊き上がった大量のご飯が機械で三角おにぎりの形に固められて、次々とベルトコンベアーに出てくる。1人が梅干しやタラコなどを乗せ、もう1人が海苔を巻く。それらを注文の数にそろえて出荷用ケースに並べては、配送先別に分けるのが私の仕事だ。
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