『今度の受付の子は陰気くさい。そぐわないので替えて』とか平気で注文もつけてきます。いつも自分がどう評価されているのか気になって、ストレスも溜まりました。たとえ一生懸命やっても、いつでも取り替え可能な物のように扱われているんだなと感じるんです」
派遣会社にとって派遣先の企業は顧客である。派遣会社どうしの営業競争も激しく、仕事のためにはえてして無理な要求にも応じなければならない。そのしわ寄せは派遣労働者に行く。

「本来の契約にある仕事以外に、洗い物やゴミ出しなど雑用も引き受けざるをえません。雑用は派遣がやって当然と思っているのか、ありがとうと人間味のある言葉をかけてくれる社員は少なかったですね。派遣労働者と正社員との間には見えない壁があるんです」
派遣会社の社員もまた、企業側の要求やクレームと派遣労働者からの不満の板ばさみになって大変そうで、ストレスで髪が薄くなった末に辞めた若い社員もいたという。

その後、彼女は別の派遣会社に登録し、クレジット会社のコールセンターで返済督促の電話をかける仕事や、テレビ局で生活情報番組の内容をホームページで紹介する仕事などをしてきている。

今回、4人の派遣労働者の実感のこもった言葉を通して、効率・利益最優先の市場経済の論理と力が浸透した社会の断面が透かし見えた。
私自身、ごく短時間の限られたものではあるが、日雇い派遣を経験してみることで、「労働移動の円滑化による人的資源の最適配分」がもたらす現実の一端にふれた。
それは、誰しもが市場経済の論理と力のシステムに否応なく組み込まれている現実でもある。 ~つづく~ (文中敬称略)

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